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「世界を手に入れるのに私の力など必要ないはずですが」
静かに言い、ティムとスノウを下がらせる。
答えは決まっているが、時間稼ぎする為にすぐ答えるのは避けることにした。
「簡単に言うなら設定された通りに動くNPCに用はない。
プレイヤーが必要なだけだ。
それも物語を変えてしまうくらいのプレイヤーがな」
「先程の少女も貴方にとってはNPCだと言うのですか」
「だろう?あれは限界を超える事はできない。
この世界の全てを知り尽くしてる俺、
精霊王に匹敵する力を持つ精霊王の影と言われるリアン。
足枷がない今、自分の意思で好き勝手に力を使える。
努力で自らの未来を変えたあんた。
俺等3人が揃えば最強だろ?」
この男はあくまでこの世界はゲームの世界だと言い切るようだ。
私にとってはゲームに似た世界で死後の世界と言えども現実の世界だ。
生前の記憶があるとかないとかでNPCとかプレイヤーって言うのは間違っている。
みな同じ立場だ。
今の男の言葉から察するにリアンも記憶持ちなのだろう。
だとすると最悪の組み合わせが目の前にいると言える。
「この世界は乙女ゲームでバトルゲームではなかったはずです」
「だからこそだろ?
俺が直接この世界を書き換えるんだよ。
せっかくの魔法の世界に来てるのに戦わないって手はないと思わないか?
どうせこの世界の人間は1度は死んでる人間なんだからさ。
もう1度死んだってまた生まれ変わるだけだ」
「本気で言っているんですか?」
「もちろん」
ありえない。
1度死んでいるからもう1度死ぬのも同じ?
違う。
たとえここが作られた世界だとしてもやり直しなどできるわけがない。
例え埋まる変わるとしてもそれは全くの別人になるはずだ。
そういう考えでいるのならば私は覚悟を決めよう。
どんなに勝てないとわかっていてもこの男に従う訳にはいかない。
<ティム、スノウ。無茶なのは百も承知だけど彼等を止めたい。
力を貸してもらえるかしら>
<今更何を言うか、主よ。主が決めたのなら何処までもついていくぞ>
ティムの言葉に同意するようにスノウの鳴き声も聞こえる。
何も言わずに同意してくれる契約精霊に感謝を伝えながらガヴリイル達に突進する。
「私は貴方達と共には行きません」
一瞬で近づき、ありたっけの光魔法を放ちながら返答を告げる。
「死を選ぶとは残念だ」
ちっとも残念に思ってない声が聞こえ、光魔法が跳ね返され服飛ばされそうになる。
なんとか踏みとどまり、追撃の準備に入る。
私の中では最高レベルの魔法だったのだが、服すら破れずに平然と立っている。
本当に乙女ゲームはどこにいってしまったんだろう・・・・。




