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先程の音は結界石を守るための結界の一部が壊れた音だ。
<ティム、状況を確認できる?>
<まさか、ここまで計算してたと言うのか>
問いに答えずティムが何やら他考え事をしているようだ。
あの2人が現れた後からティムを含めた精霊達の様子がおかしいのには気づいていたが、今回も関係あるのかと考えているとスノウが何やら異変を感じたようで私の前に防御結界を張る。
ただ事じゃない様子に警戒をしていると突然、魔法弾が雨のように襲いかかってきた。
「何これ・・・」
スノウの防御結界のおかげでなんとか致命傷を受けずに避けられたが、ありえない事態に混乱しそうだ。
だって今の魔法弾は火風地水の属性の高レベルの魔法弾で、しかも相手の気配は1人しか感じない。
基本魔法レベルの魔法弾ならあり得るがそれ以上のレベルの魔法弾は精霊の力を借りないと無理と言われているからありえないはずなのだ。
<まさかと思っていたが、予想はあったってしまったか>
ティムが呟くのとスノウが怯えながらも戦闘態勢に入っている姿に違和感を覚える。
<ティム?>
<やはり封印は解かれていたのか。
主よ、結界が壊れたのは我らがここにおるからだ。
結界は容易には壊せぬが中にいる者に焦点を合わせて攻撃しようとすれば、
その途中にある結界も壊すことは可能だ>
<的がなく打てば結界に跳ね返る。
でも的に向かって打てばその途中にある結界も壊すことは可能ってこと?
ってそんなことあり得るのというかできる事なの?>
ティムの言葉に私は驚きを隠せない。
まさかの結界に欠点があるとは思いもしなかった。
<普通なら不可能だな。
でも、できるものが2人だけおる。
1人は精霊王。もう1人は精霊王の片割れで封印された精霊。
当時の名はリアンだったか>
その名に私は電撃を受けた気分になった。
リアン。
その名は幻の隠しキャラと言われた精霊の名前と同じ。
そう思った時、再び魔法弾の雨が降り注ぎ同時に男が目の前に姿を現した。
「なっ」
油断していたつもりはなかったのだが、まさか目の前に気配もなく現れるとは予想もしなかった。
魔法弾と男の攻撃はスノウとティムのおかげで無傷とはいかないが、なんとか防げた。
「へぇ。やるじゃないか」
好戦的に笑う男はゲーム内で見た隣国の王子と同じ顔。
ただし、黒一色の服装は生前の映画に出てきそうな殺し屋みたいだ。
やはり、私の嫌な予感は当たってしまったようだ。




