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結果から言うと作戦は成功した。
作戦開始と同時にナーシャ先輩がジアーナの鳩尾に一発入れ、指輪を素早く奪い、ルフィナが受け取った指輪を高熱の炎で燃やして破壊すると同時に私の浄化魔法。
連携はうまく行ったが、ジアーナの絶叫が凄まじく、体中に裂傷が浮かび、ヤナが回復魔法をかけるが、予想以上に傷がひどく手間がかかっている。
浄化の終わったヴァジム先輩達には回復魔法は必要ないと判断するとカリナもヤナの援護に入る。
マイヤ先輩はその間もレナート達を結界で足止めしている。
幸いなのはレナート達の反撃がないことだろう。
後は教官達が2人組が持つペンダントを破壊するだけだ。
そう思い、私がほっと一息ついた時、背後に殺気を感じ瞬時に構える。
「ちょっと!!なんで貴女が出て来ないんですの?!
私は貴女以外には用はありませんわ」
メイド服を着た少女が怒りの形相で現れ私を睨む。
この訓練所内は結界が張られていて部外者は入れないようになってるはずなのに何事もなくこの場にいる少女に驚きを隠せない。
戦闘は出来れは回避したかったが、これは退くわけにはいかないか。
私が覚悟を決めると少女は妖艶に微笑む。
「ここは周りが邪魔ですわ」
そう呟くと同時に私の体が宙に浮き、あっという間に違う場所に運ばれる。
ドスンと荒く地面に落とされ、周りを見ると見覚えのある場所だった。
ここは結界石がおかれている森で非常にまずい場所でもある。
正規のルートを通らないと迷う森の中に空から飛んできたという事はここに誰かがたどり着くのも困難で戻るのも難しいという事だ。
しかも結界石は魔獣の森とこの国の境を守る結界の要石でもあるわけで、気軽に入れる森ではないはずなのだ。
ふと背後を見ると風の精霊が立っている。
あっという間にここに飛んでこれたのは風の精霊の力だとわかるが、何故風の精霊がいるのだろう。
この前の地の結界は精霊なしではできないはずだ。
でなければティムが結界内に入れないって事はなかったはずだ。
そういえばルフィナが対峙した少年は風の魔法でルフィナを人気のない場所へ連れ出したと聞いた。
「まさか・・・」
「目の前の事しか見てないから罠にはまるのよ?」
少女は私の考えを読んだように笑う。
少女の契約精霊は風で少年の契約精霊が地で、あの時は姿を現してない方が自分の気配を完全に消して魔法を使っていたという事か。
確かに少女の周りには精霊はアクアしかいなくて結界を張る為に違う場所にいると思い込んでいた。
私は立ち上がって体制を整えながらも少女を見る。
風の精霊はいつの間にか少女の背後に立っている。
「私、あの方が貴女を気にするのがとっても気に入りませんの。
ですから、私手加減は致しませんわ」
少女の目が獲物を狙う獣用に光る。
私は無言のまま戦闘態勢に入りつつ、少女の胸元に光るペンダントを見つめる。
<主、土より風のがまだ我との相性はましぞ。
まずは勝負よりペンダントだな>
ティムが念話で私に語りかけてくる。
確かにティムの言う通りだ。
マイヤ先輩のこともある。
戦闘が長引けばレナートを抑えているマイヤ先輩にも負担はかかる。
それに結界が張られている場所に易々と侵入するこの風の精霊はとても危険な存在と言える。
勝つのではなくペンダントを壊すことに集中、これしかないだろう。
<そうね。ティム初めから全力で行くから>
<無茶はほどほどにと言っても聞く主ではないか>
「いつでもどうぞ」
少女はこの言葉に笑みを浮かべる。
先手必勝。
まずはペンダントを壊す。
それにしてもこの少女が言うあの方・・・。
ガブリイルなのだろうか。




