「変わった子発見」 記入者:犬間 琴
犬間 琴、今日から高校1年生だ。今は休業中だが、小学生の頃からモデルや子役をやってきていたこともあり、自分の可愛さには自信がある。あたしほどツインテールが似合う人はいないと自負していたりもする。
いつものようにツインテールを揺らしながら、高校の昇降口前に貼ってあるクラス発表の紙を見て自分の名前を探す。
「あ、A組だ」
ふと、絶対に同じクラスになりたくなかった子の名前がA組の欄にいることに気づいてしまった。猿谷 凪。親同士の仲が良く、それがあってかモデルなどの仕事も2人で始めた。あたしと凪はそれなりに仲も良かった…あの日までは。
ため息混じりに上靴を履いて校舎内に入ると、キョロキョロ周りを見渡している女の子がいる。見た所1年生だけど、校内見取り図もあるのにまさか校舎内で迷っているのか。その子は高校の制服を着ているから高校生に見えるが、その情報が無ければ中学1年生くらいに見える。
あ、でもちょっと可愛いかも。
…あたしと同じくらい。
あたしは、昔から仕事の関係で社交的な性格を求められてきたからか、人に物怖じしなく人見知りもしない。ちょっとその子に興味が湧いて、話しかけてみることにした。
「ねぇ、もしかして迷ってるの?」
「…!そうなのよ、1年A組に行きたいのだけれど迷ってしまって。いつもあおについて行ってると、こういう時に困るのね…」
あお?って誰だろうと思ったが、そこにはつっこまないでおこう。
「私も1年A組だよ、一緒に行こうか」
「ありがとう、お優しい方なのね!私は有栖川ありす。あなたは?」
有栖川…ってあの有栖川!?この子お嬢様だったのか。必死で驚きを隠し、あたしは教室へ歩きながら自己紹介した。
「あたしは犬間琴。出席番号近そうだから席も近いかも。これからよろしくね」
「ええ、よろしくねまことさん!」
「…犬間までが名字で、琴が名前だけどね」
「えっ?」
「あー、ううん何でもない、まあいっか」
ちょっと変わった子なのかもしれないなと思いつつ、良い子そうだなとも思った。あたしは適当で自由な性格だったりするから、ちょっと変わった子くらいが丁度いい気がしている。
「あ、着いたよA組」
「あら…!ご案内ありがとう、まことさん」
「いえいえ…有栖川さんのことは何て呼べば良いかな?」
「何とでもどうぞ!」
うーん、と少し考えてみる。
「呼び捨てで良い?ありす」
「ええ、嬉しいわ」
あたしより頭1個分半くらい背の低いありすがこちらを見上げて微笑む。癒し効果があるのかもしれない。あたしもつられて微笑んだ。
結局出席番号はありすが1番、あたしが2番だった。席は廊下側1列目の1番前がありす、次があたし。
これからの高校生活、楽しくなるといいなぁ。