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自宅で僕がいつも通りゲームをしていた。
最近は、ファ○コンはいつも動いていた。
これもオシリスゲームが原因だろう。
そんな僕がゲームをしている自分の部屋に、来客が来ていた。
「ここがそうなのね」
「今日は忙しいんだ」
僕は制服から、いつも通りの黒いシャツに着替えていた。
今日も暑くて、もうすぐ夏休みの室内はジメジメ。
エアコン稼働している部屋でゲームをする僕の隣には、興味深そう教楽来がいた。
「お前は何しに来た?」
「私は毬菜の姉よ、毬菜を心配してきたの」
「その割には毬菜はまだ学校だけどな」
「そうね、残念だわ」
いつも残念そうな顔を見せない教楽来、相変わらず淡々としていた。
そんな教楽来を背に、僕はずっと『ソノサンのガキ』をしていた。
「このゲームね」
「ああ、今度のオシリスゲームだ」
「なかなか難しそうね」
「難しいだろうな、石の出し消しとタイミングが重要だ」
「でも、楽しそう」
教楽来の言葉に僕はちょっとだけ照れていた。
四つん這いになって僕の方に近づいてきた。
「楽しいさ」
「それはよかったわ」
「このゲームをやって、僕はいろいろ忘れていたんだ」
「忘れていた?」
「楽しむということを」
ゲームは七面に来ていた。相変わらず敵が現れて行く手を阻む。
しかもゴールまでの扉がずっと上の方に見えた。
「すごいところにあるのね」
「石を出し消ししてあそこまで向かう。
敵をかわして鍵を取って扉に行くのだけど、結構難しいぞ」
「敵の数が多いのね、画面は一画面?」
「ああ、この画面しかない。逃げる場所もここしかない」
「なんか上の方にある赤い玉みたいなのは?」
「それは火の玉、これで敵を攻撃できるんだ」
「そうなの、へえ」
「主人公は魔法使いだからな」
教楽来と話をしながらも、僕は敵をかわして鍵を取っていた。
敵のかわし方も慣れていて、なんなく魔法使いの主人公をあつかっていた。
「幸神君は魔法が使えるようになったら、どんな魔法が使いたい?」
「前にも行ったが、運命を変える魔法だ」
「透明になる魔法は?」
「なんだよ、それ。温泉覗く系の魔法だろ、それは」
「私は貴方を覗きたいわ」
そう言いながら目をたるませて教楽来が言ってきた。
僕は不思議そうな顔で、教楽来を見ていた。
「ばかばかしい」
「それでもあなたは毬菜の素性を知らないでしょ」
「ああ、あいつは通り魔だろう」
「そうなの?」
「本人が言っていた、使用した凶器も出てきている。
まあその凶器が殺傷能力はあるわけではないのだが」
「それは不思議ね」
「コントローラー、毬菜に撃たれた人間がすべてそうだ。
香春、求菩提、夢利無……それから大翔」
「そうなの、随分と調べているようね」
「謎が多いからな、僕の相棒は」
「あっ、お姉ちゃん。広哉のところに来ていたんだ」
そう言いながら急に僕の部屋に毬菜がやってきていた。
いつも通りのセーラー服姿でにこにこ笑っていた。




