089
ドリコム本社ビルの地下、僕には嫌な思い出しかない。
だけど僕には明らかに疑問があった。
僕の名刺は、スマホのような形をしていた。
だけどどこか古ぼけていた。
「謎なのだ」
「何が謎だ?」
「このバーコード」
夢姫が指さしたのは名刺の中にあるバーコード。
「QRコードでもなさそうだな、なんだこれは?」
「よくわからぬが興味がある、どうやってこれを読ませるのかを。
出力装置としての機能やデータ内臓量が気になるな」
「だけど、なんで僕の名刺がここにある?」
「それがコードの中身を暗示しているのだろう」
「いつの間に運転手が」
僕の隣にはバスの運転手がいた、よく見るとどこかで見たことのある叔父さんだ。
「あなたは?」
「自己紹介がまだだね、私は駕与丁 夢明。
夢姫の父親になるのだ」
「そうか、夢姫の父親ってことはファ○コンハイム」
「おおっ、知っているのか。君は常連さんか?」
「ええ、博多店には何度か……夢利無さんといいすごい世間は狭いですね」
「ああ、全くだ」
だけどここで過去に浸る余裕はない、僕は夢姫を追いかけていた。
先頭を歩いて、さらに奥の部屋に通す。
「ここは?」
「ここが、社員管理センターだ。幸神 広哉よ、ここに来るがいい」
夢姫が僕を手招いていた。
手招かれた僕は、ゆっくりと夢姫に近づいていく。
「このパソコンに座ってくれるか」
「ああ、分かった」
僕は夢姫に言われるがままパソコンの前に座った。
「さて、早速だが、適当にパソコンを操作してくれ」
「とはいってもインターネットを見るぐらいしか……」
「エロ動画とか」
「ちがいます」
僕はマウスを手にパソコンを操作していた。
ごく普通のパソコンで、何の変哲もない。
そうだな、僕はファ○コンの事でも調べようか。学校でたまに使うぐらいだから。
あまり意識をしないでパソコンを使っていた。
検索をかけ、『ソノサンのガキ』を調べてみる。
なるほど、ソノサンのガキも辞典ページがあるのか。
僕はそのページを見ながら、首を傾げていた。
「幸神はネットゲームはやらないのか?」
「一応やるけど、あんまり。お金もかかるし」
「それをドリコム社長の私の前で言うのは、なかなか勇気がいるな」
「僕は断じてドリコム社員ではない」
適当に聞き流して、自分はネットを見ていた。
五分ほど調べて、夢姫が僕の手を掴んでいた。
「大体いいだろう」
「どういう意味だ?僕がネットを調べたことに?」
「それは関係ない、そばにあるマウスやキーボードの叩き方で私の社員かどうかを判別できる」
「そんな馬鹿な」
そう言いながらも、夢姫が別のページに来ていた。
そのまま夢姫が適当に捜査していると、パソコンが検索を始めた。
「そんなシステムがあるのか」
「これでも一流IT企業だからな。結果が出た……なるほど」
夢姫が何かを納得したようだ、画面そばにいる僕はあまり理解できない。
隣にいる父の運転手も理解していないようだ。
「どういうことだ」
「結果は……やはりこんな社員はいない」
「だろう、当り前だ。なんでそこまで信用しない」
「念のためだ」
「全く……これが三種の神器か?」
「そうだな、これが必要だろう」
「まあ……何に使うかわからないからな」
僕はそう言いながら古ぼけた名刺を手に入れた。




