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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
九話:僕たちのレトロゲームに得意なゲームならば勝つ意志がある
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ラーメン屋を出る、僕と香春と加布羅兄さんは歩いていた。

大学生二人の中に高校生の僕が一人。それはなんともまあ、珍しい光景なわけだ。

それにしても加布羅兄さんと香春は、本当に仲が悪いな。

会計の時までいがみあっていたな。


「こっち見ないで」

香春と目が合うと、僕も同類と思われてか睨まれてしまった。


「ソノサンのガキとはオシリスもなかなか趣味が悪い」

「全然わかっていないわね、これだからアクションバカは」

「なんだと」

「まあまあ、このゲームは僕と加布羅兄さんとの戦いだから」

僕が加布羅兄さんと香春の仲介。

このやり取りはラーメン屋から続くこと三度目。


「ソノサンのガキは難しい、というかつまらない。

妖精は勝手に助け出されればいい、妖精になんか興味ないし」

「まあ、このゲームはそう言うゲームだから」

「妖精よりも石の出し消しが面倒だ」

「そう言うゲームなのよ、何もわからないのね。バカじゃないの」

相変わらず上から目線の香春だ。

毬菜がいないとこの人はこうも性格がきついのか。


「ソノサンのガキははっきり言って香春が上だ」

「当然よ、あたしがやりたいぐらいだわ。なんであたしじゃなくアンタなのよ。

ねえ、あんた。あたしと変わんなさいよ」

そう言いながら僕を指さしてきた香春。


「それはできない、毬菜とはコントローラー契約した」

「あなたはこのゲームに参加したくなかったのでしょ。だったらあたしに譲りなさいよ。

あたしがマリちゃんを上手に扱ってやるんだから。

あたしはソノサンのガキはG値を最高の86までいったのよ」

「マジ?」

「当たり前でしょ。まあ加布羅のバカには、あたしからアドバイスはするけど。

でもマイクコントローラーで加布羅と、あたしが勝っちゃったらマリちゃん消えちゃうし」

そこだけは切ない顔を見せていた香春。


「そんな手があるのか」

「そうね、加布羅はアクションバカだけど技量は一流だし」

「というわけで広哉、お前に勝機はない。

だから……三種の神器を渡してもらおうか?」

そういいながら加布羅兄さんがいきなり僕の手を引いてきた。

力強い手に、握られて、僕は一瞬眉をひそめた。


「なんのつもりですか?」

「広哉は聡明なのは知っている。俺が相手になることもおそらく分かっていただろう。

だけど、勝ち目はない。今の状況なら、かなわない。

敗者には三種の神器は不要な代物だ。

だから渡してもらおう、ファラオになるのには必要なのだ」

「それは……できない」

「まてっ!」

僕は加布羅兄さんの手を振りほどいて走り出した。

香春は追いかけないが、加布羅兄さんが一人で追いかけた。


「広哉っ、お前に勝機はない。降参しろ」

「それが狙いか、断る」

だけど、僕の足はあまり早くない。

加布羅兄さんの身体能力に勝るとは思えない。


だから、僕はあっという間に追いつかれそうになった。

そんな時、偶然にもバスが一台止まった。


「こっちだ、乗るがいい」

そう言いながら、小さな女の子が僕に手を差し伸べていた。

それに迷うことなく、僕はバスに飛び乗った。

しかし、そのバスの行き先は『貸切』と書かれていた。

それを確認するのは、僕がバスに乗り込んだ後だった。



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