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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
八話:僕たちのレトロゲームは懐かしいことを思い出すこともある
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僕はマンションの中にいた。

そこに来るのは、久しぶりのことだ。

僕の近くにあるマンション、そこにはかつて好きだった人がいたマンションだ。


マンションの一室に通された僕は、位牌に手を合わせていた。

その後ろには落ち着いた雰囲気の叔母さん。


「会いに来たよ、呰見」

「ありがとうね、幸神君」

「いえ、僕は呰見のことが忘れられませんから」

毎月一回、僕は呰見の家に来て位牌に手を合わせた。

それが僕にとっての罪滅ぼしだ。


「でも、幸神君だって前に進まないといけないでしょ」

「大丈夫です、僕はいつも呰見のそばにいますから」

「そう、嬉しいわ」

単純に母親が喜んでくれた。だけど僕は正直なところこれだけが目的ではなかった。


「でも、まだ戻ってきていないんですよね」

「ええ、戻ってこないわ」

「不思議ですよね」

「そうね、幸神君だけ見つかってよかったわ。

あの地震、沢の流れも急だったし」

「呰見が戻らないのは不憫ですよ」

僕は苛立ちを覚えていた。

呰見が失踪した、沢でおぼれた僕は助かって呰見は未だに見つかっていない。

だから、ここの位牌にも呰見の名はない。

それでも、呰見のことは僕に責任がある。


「本当に申し訳ない」

「いいのよ、気にしないで」

「いえ、あれは全部僕が悪いんです」

「そんなことないわ、あの子だって楽しみにしていたのだから」

そう言いながら母親が持ってきたのは、夏休みの宿題。

僕はそれをはっきり知っていた。


「夏休み……あの日はもう帰ってこない」

「幸神君は、呰見が死んでいると思う?」

「思いたくない」

「そうよね……でも私たちはもうどうでもいいの」

「なんでそうやって……」

「いいの、疲れたのよ。あの子だって永遠にさまようわけにはいかないでしょ」

「僕は諦めていない」

「諦めなさい!」

呰見の母が急に僕を諭すように言ってきた。絞り出すような強い声で。

だけど僕はじっと呰見のことを諦めていない。


「それはできない」

「いいえ、諦めてくれないと私が辛いの」

「……だけど」

「だとしたら考えがあるわ」

僕は強くいう事ができない。

そんな僕のいる部屋のマンションが急にノックされた。


そして、出てきたのはあまりにも意外な人物。

間もなくして出てきたのは、ブレザーの人物。

眼鏡をかけて知的な女が、僕の目の前に現れた。


「きょ、教楽来?」

「あら、久しぶりじゃない」

そういながら教楽来が、呰見の部屋に来ていたのだ。



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