071
雑居ビルに写されたプロジェクションマッピング。
僕のそばには教楽来がいる、毬菜が下着姿になって横目でみられた。
教楽来の視線を外そうとするが、隣にいる雅もやっぱり僕を見ていた。
この魔田村の主人公は鎧が脱げ得ると、情けない下着姿になる。
予想はしていたが、毬菜は鎧が脱げると下着姿になった。
あまり大きくない胸だけど、露出されるとドキドキしてしまうのは気のせいだろうか。
「エロいわね」
「ルイの趣味か、覚えておこう」
「違う、不可抗力だ」
教楽来と雅が睨む。僕が反論するが、全く説得力がない。
こう見えてもピンチ……なんだぞ。
僕たちは最後の一機、次のダメージで毬菜は死んで僕たちは終わりだ。
しかもタイムアタック、ゆっくり行っても負けてしまう。
ゲームに視界を移す。
水たまりを越えて真っ暗な森を抜け、僕は敵に警戒しながら先を急ぐ。
森を進んでいくと、幽霊のようなものがふわふわと浮いていた。
(何とか鎧を手に入れないと。確かこのあたり……)
水たまりを越えた先で、なぜか何もないところでジャンプをした。
「そんなところにあるのか」
「ああ」
出てきた壺から鎧が出てきた。毬菜は再び鎧を装着した。
だけどこのあたりから新しい敵が出てくる。
「飛んでいる鎧じゃな」
雅が声を上げるが、ゲーム画面には盾を持った鎧を着た幽霊が出てきた。
もちろんこの鎧の幽霊に触れても毬菜はダメージを受ける。
(こいつ、よけにくいんだよな)
ゆらゆらと飛んでくる鎧の幽霊をしゃがみながらかわす。
だけど、先の方から新しい壺。そこから謎の風車が出てきた。
(なんだ、これは?)
僕はせっかくだから取ってみると、時間が三十秒減った。
「時間が減ったぞ」
一瞬にして僕はこのアイテムを思い出した。
これは点滅風車、時間が減る罠アイテムだ。隣で見ていた教楽来と雅は見ていた。
鎧を着た毬菜をさらに先に進める。今度は別の幽霊だ。
肌色の幽霊が、周囲に一気に現れた。
「あれはソーセージ?」教楽来が指を刺しながらじっと見ていた。
「違う、幽霊だろ」
「でもネギを持っているわ」
「ネギじゃねえよ」
飛ばしてくるのは槍だと思うが、確かに見た目はネギに見える。
それをかわしながら、邪魔なやつを倒していく。
何匹か倒すと、壺の中から短剣が出てきた。
「短剣か」
僕は毬菜に素直にとらせた。
短剣は結構使い勝手がいい武器だったよな。
だけど、取った瞬間に敵が出現した。
僕は目の前のはかわしたが、後ろから出てきた肌色の幽霊。
「クソッ、次から次へと」
僕は背後の槍をよけようとしたが間に合わなかった。
再び毬菜の着ていた鎧がはじけ飛んだ。
また、毬菜は下着姿に戻っていく。なんで毬菜はいちいちポーズをとるんだ。
「黒ね、なかなかだわ」
「ルイはもしかして、毬菜の裸がみたいから……」
「違う……失敗しただけだ」
魔田村は、思った以上に難しい。
初めてやる人間は、大体一面すらまともにクリアできないのが普通だ。
ゾンビの無限増殖、赤い悪魔、それから森のソーセージお化け。
アイツの名前って、たしかウッディっていうんだっけ。
「ボスか」
森のエリアを抜けると、巨大な門が見えた。そして出てきたのは大きな角を持った男。
紛れもなく、このステージのボスだ。
毬菜をジャンプさせて、槍を投げさせる。
しかし、毬菜の方に素早いスピードで向かってきた。
(結構堅かったよな、こいつ)
毬菜はジャンプで短剣を連射、だけど一角男は顔をしかめながらもさらに近づいてくる。
距離的に木二本分まで迫ってきた。
(もうちょいか)
何回かジャンプ槍投げで頭を狙って、一角男は倒すことができた。
炎に包まれて消滅してく。なんで倒されると炎で包まれるのかは謎だが。
そのまま鍵を取ると、毬菜が鎧姿に戻った。
なんか毬菜がちっと舌打ちしたようだが、それでも勝ち誇ったポーズを見せた。
「よしクリアだ」
「問題はタイムね、時間は57秒かしら」
「ああ、あの弥七が問題だな」
そして、僕は結果を見て自分の失敗を確信した。
またしても僕は三位だった。
二位との差は17秒差だった。




