表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
七話:僕たちのレトロゲームが最新ゲームに及ばないこともある(
64/129

064

体育館でゲームをした日から八日ほど過ぎた。

明日はオシリスゲームのステージ6が始まる。


『魔田村』のゲームソフトをかつて、僕は持っていた。

だけど、このゲームソフトだけはどこかに行ってしまった。

元はゲーセンでこのゲームをワンコインでクリアもしたことがあるので、自信がないわけではない。

が、それも小学生の話だ。

マイトナバンジャップの時からそうだ、できることができなくなっていた。

今、どこまでできるのかが分からない。


そんな僕が来ているのは、僕の部屋よりはるかに広い部屋。

40インチの大型テレビで、自宅から持ってきたニューファ○コンを繋いでいた。

真っ白な壁に、きれいに整った部屋は僕の部屋じゃない。

コントローラー片手に、僕は『魔田村』をやっていた。ここにはゲームソフトだけあった。


真っ暗な洞窟の様な所を、鎧を着た男が進んでいく。

『魔田村』とは、騎士の男が悪魔の王にさらわれたお姫様を助ける話だ。

ただ、悪魔の王がいるのが『魔田村』というホラーチックな場所にいる。

ファ○コン初期のゲームで、二周クリアするとか、攻撃を喰らっても鎧を着ていると生き残るとか。

そう言う画期的なシステムのゲームだ。あれ、有名な配管工のゲームもそうじゃないのか。

そんな僕は、魔田村のゲームソフトを求めてある場所に来ていた。


「ルイ、お茶を持ってきたぞ」

「ああ、雅」

そう言いながら、黒のキャミソールで怪しげな魅力を持った雅がお茶を運んできた。

ここは雅の自宅の部屋、雅の部屋に最近僕は通っていた。


「まさか、雅が『魔田村』のソフトを持っていたとは」

「うむ、持っておるぞ」

「本体はないのにか?」

「そうじゃ、これは呰見の家で譲ってもらったのじゃ」

雅の言葉に、僕は懐かしさと悲しさが入り混じった。


「雅……呰見の話はもう出すな」

「ルイにとってはもう一つのトラウマじゃな」

「ああ……」

僕はそんなことを言っていると、胴長のドラゴンが現れた。

魔田村ステージのボスだ、短剣を手に僕は宙に浮くドラゴンと対峙した。


「ドラゴンは確か頭を狙うとあっさり死ぬんだよな」

「そうなのか」

「それに、こいつは規則的に円を描く。だから安全地帯もあるんだ」

鎧を着た騎士を僕は段差の手前でしゃがませた。

ジャンプしながらドラゴンの頭に短剣を叩きこむ。

中を飛ぶドラゴンは、迫るようだが、円を描くように避けていく。


そのまま僕は短剣を叩きこんでドラゴンを倒していた。

火に包まれたドラゴンを、僕の隣で雅が見ていた。


「やっぱ、覚えているな」

僕はドラゴンを倒して、上から降ってくる鍵を取ってきた。

すると僕が操作していた騎士は、両手を上げていた。そのまま先の門が開く。


「さすがルイじゃ、本当に騎士みたいだ」

「魔田村は、姫様を助ける騎士が主人公だからな」

「ほう、魔田村は奥が深いのじゃ。

じゃが、なぜ一人でわざわざそんなところに向かうのじゃ?

国の姫なら、国中の兵士をかき集めて向かうのがよかろう」

「さあな、それは考えたこともない」

僕は次のステージ画面になるゲーム画面を見ていた。


「毬菜はいないのか?」

「ああ、なんでも忘れ物があるからって……最近は別行動だ。

いいんじゃないか、一週間ぐらいオシリスゲームが開催されないからな」

「三種の神器……か」

「ああ、残ったのは三組。僕以外に二組いる」

僕は次のステージで、青い壁から茶色の壁に変わった中でも騎士を動かしていく。


「ルイは『三種の神器』を持っていないのか?」

「ああ、無い。逆に言えば毬菜には心当たりがあるらしいがな」

「記憶が戻ったという事か?」

「それもあるが、正直あいつのことはよくわからない。そんなことより、雅」

「なんじゃ?」

「例の情報は調べてあるんだろうな」

「無論じゃ、わらわはこれでもできる女じゃ」

「そうだな、これは毬菜に聞かれては厄介だからな」

雅がお盆の下に置いてあった大きな茶封筒を手渡してきた。

僕はそれを受け取りながら、中身を確認する。


「よく、ルイは気づいたものだ」

「お前が本来気づくのじゃないのか?オシリスの格好を見て」

「そうじゃな、あの時はまともな精神状態ではなかった」

「わりぃ」

僕は懺悔の気持ちを雅に見せた。

オシリスが着ていた格好、それはドリコム社専用の背広だ。

ドリコム社のスーツは必ず社章の刺繍を入れていた。

前回の雅の誕生日パーティの時にも、ドリコム社の社員はほぼ背広だった。


「雅の家はドリコムの傘下なんだろ」

「いや、もうすでにドリコムじゃ。

わらわの会社は、ドリコムに乗っ取られたと言ってもいい。

ドリコムはわらわの会社をうばった強盗なのじゃ、魔田村の魔王みたいにな」

「でも、その割にはドリコム社の社員が随分来ていたようだけど」

「あそこにいたのは、かつてわらわの父上が経営した会社にいた人間ばかりだ。

元々ドリコムの社員はほとんどいない」

「そうか、なるほど」

僕は茶封筒の中身を見ながら、一人の人間のプロフィールを見ていた。


駕与丁(かよいちょう) 夢我(むが)、これが社長の父親か。

こいつがオシリス登場後の失踪リストに載っている、一番偉そうだな」

「そうでもないぞ」

僕の隣から、雅も覗き込んできた。


「どういうことだ?」

「役職を見てみるがいい」

「役職?ああ副社長、どういうことだ?」

「それは分からぬ、ドリコムは謎が多い。後は直接社長に聞くしかなかろう」

「そうだな。雅、連絡はつくのか?」

「ああ、社長は大体ドリコムタワーにおるじゃろう」

「分かりやすい」

ドリコムタワーを知らない福岡県民はいないぐらい、あまりにも有名な観光名所だ。

ドリコムタワーは、ドリコムの本社にある高いビル。塔のような高さからそう言われていた。


「アポイントを取るのなら簡単だ、わらわの父から頼んでおこう」

「うん、それは助かる。明日でも早速頼む。

それから雅、この失踪リストを貰っていいか?」

「よいぞ」

「後、しばらく魔田村のゲームソフトを借りていっていいか?」

「それはダメじゃ」

なぜかそこは拒否をする雅、目が切なそうに訴えてきた。


「なんでだ?雅はもうこのゲームは必要ないだろ」

「いいや、これだけは渡せぬ。ルイが……」

「分かった、またしばらくここに通うぞ。じゃあ、明日もつき合ってもらうぞ」

「うむ、それでいいのじゃ」

雅はやっぱり満面の笑顔を見せていた。

それを見て、僕はやれやれと頭を掻きながらゲームを再開していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ