062
いきなり出てきたオシリスに、僕はじっと見ていた。
静寂を切り裂くように出てきた、バタフライマスクをつけていた男が出てきた。
もちろん、これはプロジェクションマッピングなのだが。
博多駅以来の登場に、毬菜は顔を明るく見せていた。
スーツ姿のオシリスに、僕は嫌悪感を覚えた。
アイツの姿と声、やはりどこかで見たことがあるんだよな。
「オシリス……」
「私の余興はいかがかな?プレイヤー諸君」
「くだらない余興だ」僕は吠えた。
「それはすごいことだ。だがこれからもっと厳しくなるだろう」
「広哉、会話できないよ」
毬菜が手を振りながら僕に言ってきた。
僕はただ、苦い顔を見せてオシリスを見ていた。
「さて、現在のところ五名が消滅したところだ。
ステージ4のループ2で、中学生男子と中学生女子。
まさか二人同時に脱落するとは思わなかったよ。
だから、私は一つのステージを進めることにした」
まるで他人事だ、嘲笑するオシリスに嫌悪感があった。
「五人の人間が死んだ、だけどこのゲームはまだ終わらない。
私はね、もっと退屈を満たしたいのだよ。そう、この世界は退屈に満ちている」
「言いたいことばかり言っているな」
雅は憤っていたが、僕はずっとオシリスを見ていいた。
「そうそう、一つ言い忘れたのだが裏技がある。いや、真エンディングルートと言うだろうな。
ファラオになるには単にゲームをクリアするだけではだめだ。
このゲームは、マイトナバンジャップもそうだろう。
このゲームのシンエンディングには、必要なクリアアイテムが三つ用意されている。
富と名誉を示す札、不思議な力を与える銃、時間を巻き戻す袋。
この三つは、私がある三人のプレイヤーに渡してあるのだ。
まあ、『三種の神器』と呼ぶことにしよう」
「なんだよ『三種の神器』って。いきなりそんな設定を出すな!」
「よく聞かせてください」
毬菜が僕のことを珍しく制した。
「これだけでも、少しは楽しくなっただろう。
さて、これから私はもっと世界を退屈から解放しようと思う。
今度のゲームは、『魔田村』ホラーゲームだ。
しかも今回のルールは少し変えてある、タイムアタックだ。
ゾンビが襲い掛かる魔の森を君たちは、最速で抜けられるか?
最後になったが、私は最後のステージで待っている。
勇敢な君の挑戦を待っているよ」
そう言いながら、オシリスは一方的に言いたいことを言いながら勝手に消えた。
僕と雅、毬菜の三人はそれを呆然と見ていた。
「何じゃ、あれは」
雅はそう言いながら、いつも持っていた黒い傘先を体育館の壁に向けてきた。
「オシリスです」
「ああ、そうだな。これは……あいつの格好」
僕はただ一人、オシリスが出てきた体育館の壁を見ながら考えていた。
それはどこかで見たことのある格好だった。




