061
僕がやっていた体育館では、雅が来ていた。
体育館に流れるリザルト画面を見て、僕は全てを理解した。
だけどリザルト画面には、意外な結果が出てきた。
体育館の街灯の明かりで、黒いドレスを着ていた雅は悲しそうな顔を見せていた。
僕はコントローラーをすでに持っていない。
隣にいたのは毬菜だ。その毬菜も笑顔を見せていた。
「雅ちゃん……」
「あなたはいつもそうよね……毬菜」
「うん……でも戻ってこないよ」
「あなたのそういうところが嫌い!」
雅は強い口調で言ってきた、毬菜はちょっとだけ悲しそうな顔を見せた。
その二人の間に僕が入る。
「残機はなくなった」
「ルイは強かったな」
「毬菜と一緒に練習した、毬菜が僕のトラウマを解消してくれた」
「わらわはなぜ負けたのじゃ?」
「お前は今でもニンジンが嫌いか?」
僕の言葉に雅が顔を上げた。
その顔は、昔の雅と同じ食べ物に怯える顔。
「ニンジンは苦手ではないのじゃ」
「それは嘘だ。誕生日パーティ、全部不自然にニンジンがなかったが。
カレーもスープも付け合せのニンジンが全然入っていないじゃないか」
「ううっ」
「お前はトラウマを克服できなかった」
「それが何だというのじゃ?」
「僕は毬菜と克服した、過去の自分に勝ったのだ」
僕の言葉に、隣の毬菜はうんうんと頷いた。
それと同時に崩れ落ちる雅。
「そうか……わらわは勝てなかったようじゃ。ルイにも、過去の自分にも」
「トラウマは克服するためにある」
「広哉は簡単に克服できなかったね」
毬菜が相変わらず笑顔で言ってきた。
さっきまで、毬菜は死にそうだったんだぞ。こいつは。
それをうつむいて、雅は聞いていた。
「それより、オシリスだ」
「オシリス?」
「ああ、僕はどうしても聞きたかったんだ。雅、ドリコムとオシリスの関係を?」
「わらわは何も知らぬ」
「そうか、まあそうだろうな。お前のことは何となく知っているが、オシリスのことを分かるわけはないんだ」
「なかなかいい余興だよ」
そう言いながら、僕の背後から声が聞こえた。
それと同時に、ゲームが終わったはずの体育館が再び投影された。
先ほどのゲームの映像とは違う別の映像だ。
それは何よりオシリスの顔が出てきた。




