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~~紗羅萬弩ループ2、4-3~~
(MARINA‘S VIEW)
ビックワイパーそれはとてもかっこい戦闘機。
あたしの体は、今日も宇宙空間に来ていた。
それにしても戦闘機の温度が急上昇していた。
あたしは宇宙服を着たまま、ぐったりしていた。
(暑い……)
あたしの見える戦闘機の上には炎が見えた。
さらに下にも炎が見えた。それが戦闘機の内外を暑くしていた。
(これじゃあ、あたしがこんがり焼けちゃうよ)
笑顔だけど、汗がだらだらと流れ落ちた。
最初のループの時にも来たけど、ここは地獄だ。
(それとも焼けたあたしが好みかな、広哉は)
なんか適当なことを考えても、暑さは紛れなかった。
コックピット内にある温度計は五十度、クーラーつけたい。
(いけない、広哉は頑張っているんだ。
あたしと約束した、絶対クリアするって)
あたしはゲームに入る前に広哉と約束した。
ループ2もクリアしようって、残機一機でも死なないようにしようって。
(広哉は雅ちゃんに向かっていった)
そのことがあたしにとっては嬉しかった。だけどなんだか懐かしい気もした。
いろいろ考えて、ぐちゃぐちゃになったあたしは、呼吸を乱した。
(あたしのトラウマ、あたしの過去、あたしの記憶)
あたしは分からないことだらけだ。
自分が何者かもわからないのに、広哉はあたしを助けてくれた。
広哉は自分の事でも関係ないのに、助けてくれた。
出会って一か月ぐらいなのに、あたしを助けてくれた。
(今度はあたしが助ける番だ)
あたしは暑さで意識が朦朧としながらも、操縦桿を握り締めた。
そんなあたしの目の前には、真っ赤な龍が出てきた。
(でもあたしは何もできない)
それがあたしにとっては悔しかった。
だからこそ、あたしはこのゲームを見守るしかない。
(広哉は今度こそ、突破してくれる)
あたしはただそれだけを願いながら操縦桿を前に倒した。
全く動かないけど、それでもあたしは願いを込めた。
(広哉の夢はあたしの目的)
レーザーを放つ自動操縦のビックワイパー。
あっという間に、真っ赤なドラゴンを倒していく。
(あたしは、クリアしていくんだ)
倒れたドラゴンを見ながら、再びビックワイパーが傾いていく。
そして、あたしは体が一瞬浮き上がった。
いつの間にか暑さはなく、あたしは大きく一呼吸をした。
(最後のステージだ)
あたしは、呼吸を整えて見ていた。そこは再び見えた宇宙だった。




