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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
六話:僕たちのレトロゲームはマルチエンディングになることもある
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始めから僕は気づいていたのかもしれない。

薄暗い中学校の校舎、僕はとある教室の机の上に座っていた。

そして、僕が待っていたのは一人の人間。

それは男だ、見ていたスマホをポケットにしまって睨んだ。

顔ははっきり見えないが、僕は確信していた。


「大翔」

「兄貴……なんのつもりだ?」

「ここがお前たちの会場か?」

僕はそう言いながら机の上から飛び降りた。

そのまま、そばにあった黒板を強く叩く。


「どこで知った?」

「当り前だ。僕たちは血のつながった兄弟だ、隠し事はよくない。

お前のスマホを見させてもらった。

コントローラーなら、オシリスからメールが届くからな」

「卑怯だぞ兄貴」

「卑怯なモノか、お前が毬菜をいじめていたくせに」

僕は大翔を険しく睨んでいた。


「関係ない、兄貴は八神中じゃない人間だ」

「お前の何が毬菜をいじめさせる?」

「虚ろだ、毬菜は虚ろなのだ。

他の誰とも違う、間違いなくあいつは虚ろだ」

「意味分からない」

「毬菜は性格が不確定だ。一緒に暮らすことで、それは確信に変わった」

「それでも毬菜をいじめていいことにはならない。

あんなアザまで作って、どれだけ毬菜を追いこむんだ?」

「何のことだ?」

「とぼけるな、お前がやったのは暴行だ。中学になって、そんな分別もつかないのか?」

「……やれやれ」

大翔が首を横に振って、降参のポーズだ。


「さすがは、毬菜。あんな嘘までつくのか」

「嘘じゃない、あいつはいつもあざを消すのにコンシーラーまで塗ってごまかしていた。

お前たちがいじめたのだろう」

「いじめているのは認める……が暴行を振るうことはしない」

「お前は知らないのか?毬菜が体中あざだらけなのを」

「知らない、それがしはネットでしか毬菜を叩いていない」

大翔は詰め寄る僕を、恐ろしく冷静に振り払った。

僕には全く理解できなかった。


「じゃあなぜだ、なんで毬菜は……」

「そのことについてはわらわが説明しよう」

そして、教室に一人の人間が入ってきた。

もちろん、暗闇の中でもドレスを着ているのですぐにそいつが誰かわかった。



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