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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
六話:僕たちのレトロゲームはマルチエンディングになることもある
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――この話はやはり五年前のキャンプをしたときの話だ。

小学生の僕達は、自然のテーブルを囲んでご飯を食べていた。

コテージそばにある大きなテントに、コテージ班ごとに集まっていた。

僕達の班は、炊き込みご飯を作っては呰見と雅と食卓を囲む。


「去年より、上手くできたかな」

「うん、おいしいよ」

フォーク片手に、呰見は嬉しそうに食べていた。

隣にいる雅は、皿に盛られた炊き込みご飯に難しい顔を見せていた。


「どうした、雅?」

「うむ、大丈夫だ」

「何か苦手なものがあるのか」

「いや……ないぞ」

そう言いながら、一生懸命フォークを使って食べようとしていた。

が、なぜか手が震えて口に運ばない。


「雅?」

「大丈夫だ」

「本当か?食が進まないぞ」

「ああ、大丈夫だルイ」

僕の言葉に、雅は明らかに何かをためらっているようだ。

それに気づいた呰見は、雅のほうへ近づいてきた。


「雅ちゃん、ニンジン嫌いなの?」

「そ……そうではない」

「でもニンジンいっぱい残っているよ」

「あっ、ホントだ」

呰見の言うとおり、雅は一生懸命皿にあったニンジンを避けていた。

ほじくるように炊き込みご飯からニンジンを取り出しては、よけていたのだ。


「ダメだぞ、雅。好き嫌いしたら」

「ううっ、苦手なものは苦手だ」

「でも、ちゃんと食べないと大きくなれないよ」

呰見に言われて、雅は困った顔を見せていた。


「でもこの微妙な甘み、赤い色、わらわはどうしても嫌なのだ」

「せっかくさ、お手伝いの人が持ってきた野菜だから食べないとだめだよ。

佐藤さん地の畑で採れたものだから、おいしいと思う」

佐藤さんとは、このキャンプで同伴してくれるおじさんだ。

ボランティアで野菜を提供してくれた、近所で農家の人だ。


「じゃが……」

「雅ちゃん、おいしいよ」

呰見がおいしそうにニンジンを食べていた。

それを真剣に見ている雅、皿の隅に追いやったニンジンを見ていた。


「ほら、呰見だって食べるんだ。僕だって」

僕も雅の前でニンジンを食べて見せた。なるほど、佐藤さんのニンジンは甘くておいしい。


「なぜ、二人とも食べられるのじゃ」

「おいしいからだよ、雅ちゃん」

「呰見……」

「食べよう、ニンジン」

呰見は、にっこり微笑んで雅の前でまた食べて見せた。

雅はそれでも手を振るえて、フォークを置こうとした。


「雅、諦めるのはダメだ!」

「ルイ……なんで?」

「ニンジンを食べられるのをここで諦めたら、二度と直らないよ」

「それでもいい」

「そんな雅を、ルイは軽蔑するな。ニンジンが嫌いな雅は女王でも何でもないよ」

「ルイ……それはズルイ」

「じゃあ、女王なら食べられるだろ」

「う……うん」

雅は半分強がって、再びニンジンを掴んで口元に運んでいく。

そのまま目をつぶって食べた。


「おいしい?」

「……マズイのじゃ」

雅はやっぱり嫌そうな顔を見せたが、何とか口を動かして食べようとしていた。


「そうだ、雅」

「ルイ、酷いのじゃ」口の中のニンジンを食べた、雅。

「やればできるじゃないか、雅」

「……ルイ、何故ニンジンを?」

雅は半分泣き出しそうな顔に変わっていた。


「それは雅のためだよ」

「わらわのため?」

「ああ、雅が大人に、立派な女王に成長するためさ。

雅は女王になるんだろ、立派な女王に」

「そうじゃ……女王なのじゃ」

「だったら……」

「むむむっ、なんだかやりこまれたが仕方ないのう」

観念したのか、ゆっくりとそのあともニンジンを食べていた。

それを嬉しそうに見ていた呰見、僕も雅のニンジンを食べるのを応援していた。


「広哉さんは苦手な物はあるの?」

「僕か……食べ物じゃないけど」

そう言いながら、僕は一つのゲームの名前を挙げた。



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