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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
一話:僕たちのレトロゲームはスタートボタンで始まることもある
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教楽来姉が指さしたのはレトロゲーム。

それはビデオゲームエリアの中でも、隅に追いやられる古いゲームのことだ。

昔発売されたコンピューターゲームを、ゲーセンに移植しているシロモノ。

普通に考えて、ノスタルジーに浸りたいサラリーマンぐらいしかやらないだろう。


だが、僕は違う。レトロゲームは、やったことがある。

年代的に見ても三十年以上前に発売されたレトロゲームを、高校生の僕は上手いと自負があった。

それは、周りでやっている人が多いから。


通常のビデオゲームは一回百円のゲームも、レトロゲームに関しては値段が違う。

一回十円でできる激安ゲームだ。

そんなレトロゲームコーナーの一つの筐体のそばに来ていた。


「『マッチー』か、こいつでいいのか?」

「ええ、いいでしょう。こう見えても私は最近練習しまくりなの、プロ級と言ってもいいわ、

いいえ、これから本格的にプロになろうと思うの」

「随分な自信だな」

「私は理不尽に打ち勝つため、あなたと勝負よ」

などと言いながら、僕と教楽来姉は椅子を二つ合わせて一つのゲーム筐体の前に座った。


(お前の方がよっぽど理不尽だよ)

それでも僕は引くのも嫌なので、教楽来姉と隣あって座った。

が、ちょっと教楽来姉の長い髪からいい香りがした。

女性らしくシャンプーを使っているみたいだ。これは色仕掛け作戦なのか。


「もしかして私にドキッてしちゃったの?」

「しねえよ」

「発情中?いいのよ、大丈夫。私を心配しないで。

私はあなたが近くにいても興奮……しないわ。私のバージンを奪ってもいいけど。

動物の雄が雌を欲しがるのは理不尽ではないわ」

「だから、そんなわけねぇよ。何言っていやがる!」

僕は初恋のことを思い出してか、首を横に振っていた。

教楽来姉は僕の反応を見て、髪を優雅にかきあげていた。


「そうね、とても残念だわ。私はこう見えても胸がとても大きいほうなのに」

淡々と自分の胸自慢をしながら、ゲーム画面にコインを投入する。

確かに教楽来姉の胸が大きい、ブレザーの上からも胸の輪郭が確認できた。


「作戦だろうがそんなものは無駄だぞ、僕は手を抜かない。

勝負の内容はどうする?何面まで行けるかにするか?」

「そうね、それでいいわ」

かくして、僕と教楽来姉は『マッチー』というレトロゲームを始めた。



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