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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
五話:僕のレトロゲームの中にも苦手なものもある
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僕が多々連家の別荘で叫んで後悔していた。

ここにはもしかしてゲームのプレイヤーが、ほかにいるかもしれないことに。

僕の前には、大翔が急に痛そうな顔をしてすぐに悶える顔に変わった。

どうやら、雅にお尻をつねられたようだ。


「あううっ、雅様」

「全く、なぜ馬鹿正直に叫ぶのじゃ」

「雅様が……きもちいいです~」

「ふん」ふてくされる雅と、痛がりながら喜ぶ大翔。

僕の隣には、毬菜がいつのまにか笑顔に戻っていた。


「言っちゃいましたね」

「悪い」僕は毬菜に反省の弁を述べた。

一瞬騒然としたが、すぐに雅が手を振り来場客になんでもないことをアピールした。

それを見て、思った以上に騒然としなかったわけだが。


「やはり、ルイはプレイヤーか」

「ああ、オシリスゲームステージ3をクリアしている。

雅のコントローラーが存命ということは、|JUNIOR HIGH・W《中学生・女》か?」

「その通りじゃ、毬菜と相棒なのがわらわはショックなのじゃ」

「そんなことより、僕はお前にどうしても聞きたいことがある」

「うむ、申してみよ」

雅は自信たっぷりに僕の方に顔を向けた。


「お前はそんなにレトロゲームが得意なのか?」

「ほう、そう来たか。これでも得意じゃぞ、むしろ学生の方がゲームをする時間があるものじゃ。

大人になれば、もっと難しいゲームをするじゃろうが。

参加者が学生ならば、ゲームを練習する時間がある」

「なるほどな、それでもお前にレトロゲームの話はあまりしていないが」

「スマホがある、リメイクされているからな。

ドリコム社のゲームじゃぞ、わらわはこれで特訓をしておる。

昔のゲームらしいが、名作はリメイクされるのがならわしじゃからのう」

雅が見せつけたのは、スマホだ。

自慢げにスマホを見せては、今度やる紗羅萬弩のゲームシーンが見えた。

ゲーム画面は小さいが、全く同じ画面が移植されていた。


「そうか、リメイクされていたのか」

「先人たちの知恵や教訓は、未来を形作るものじゃよ」

「お前の格好もそうなのか?」

「無論じゃ、わらわはマリー・アントワネットの生まれ変わりなのじゃよ」

そう言いながら高貴に笑って見せた雅。

やはり雅は、厨二病という病におかされているらしい。


「そこでわらわは、一つ宣言しようと思うのじゃ」

「なんだよ、宣言って?」

「雅様、そろそろ時間です」

「うむ」大翔に促されて雅は背を向けた、そのままパーティ会場で教会の方にゆっくり歩いていく。

僕の隣の毬菜は、首を傾げて僕を見ていた。


「おいしそうな食べ物ですね」

「ああ、好きなの食べろよ。家に帰ったらロクなもの食べられないからな」

「ほんと、やった~」

毬菜はそう言いながら、近くにあった料理が乗ったテーブルに走って行く。

だけど僕はずっと、気になっていた。雅の言葉が。

ある程度のつきあいだ、こういう時はロクでもないことを起こすのが雅だ。

雅は間もなくステージのマイクの前に辿りついた。


「本日は、多々連 雅の十四歳の誕生会に集まって頂き、感謝の極みじゃ。

わらわも十四の年月を感じて、一つ皆に打ち明けねばならぬことがある」

雅の言葉に、周りのパーティ参加者がざわめき始めた。

僕はだんだんと嫌な予感が強くなっていく。

警戒するように、僕はステージの方に視線を送る。


「わらわは、今一つのゲームをしている。

それはオシリスゲーム、わらわはオシリスゲームの参加資格を有しているのじゃ」

「おおっ」

オシリスゲームは、僕が博多駅でやっていたプロジェクションマッピングでまた話題になっていた。

当然のことながら、パーティの参加者も知らないものはいない。

雅に対する視線が、一気に注がれた。


「オシリスゲームは皆の知るところ、ファラオになれば願いが叶うそう言うゲームじゃ。

そのために、他のオシリスゲーム参加者と戦うことになる。

最後の一人に勝ち残ったものが、ファラオになれるゲームじゃ。じゃからわらわは……」

雅の言葉、参列者がどれくらい理解しているかわからないが僕は周囲を見守っていた。


このパーティの参加年齢数は大人がほとんどだ。

つまり雅の父親の会社の人間が多いということだ。

雅の会社は、現在ドリコムの傘下に入った会社。

不穏な動きをすれば、他の参加者を割り出すことができるかもしれない。

だけど、パーティ参加者はざわざわしているだけで、目だった動きがない。


(尻尾を出さないか……それとも僕が叫んだことで様子をうかがっている?)

などと言いながらも、僕は周囲に気を配っていた。


「わらわはもちろんファラオを目指すぞ。

そしてファラオになった暁は……幸神 広哉君と結婚をする」

「へ?」

「幸神 広哉君、こちらへ」

周囲に意識を飛ばしていた僕は、雅の告白で一気に集中力を失っていた。

それと同時に周りのパーティ参加者から拍手が沸き起こった。

そんな中でも、僕はパーティの料理を見ながら気になることが一つあった。



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