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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
五話:僕のレトロゲームの中にも苦手なものもある
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海の見える浜辺の近くに真っ白な家、それは別荘だ。

真っ白な別荘は多々連家のモノで、僕はここに来たのは二回目だ。

海を背景に見えた白い建物は、まるで教会だ。


両側にはきれいに整えられた池。

ラフな私服で行くわけにもいかず、よそ行きのスーツもなく、制服がまともだと判断して制服で参加した。

隣には毬菜、普段同様こちらもセーラー服だ。結局学校に行く格好と変わらない。


「全く、洋服を用意する余裕がないんだぞ」

「うん、でもすごい人だね」

「ああ、全く雅も誕生日会だけでこんなパーティをしやがって」

「本当にお金持ちだもんね、雅ちゃん」

「会社の社長の娘だからな。僕達なん生活に困っているっていうのに」

「僻み?」

「まあ、そう言うところだ」

「ようこそ、ルイ」

そう言いながら出てきたのが、雅だ。相変わらずのきらびやかな黒のドレス。

蝶をあしらったレリーフは、まさに漆黒の姫君そのものだ。

隣には藍色のスーツを着た執事じゃなく、僕の弟の大翔。

雅お気に入りの黒い傘で、雅のことをエスコートしていた。


「さすがは雅女王様」

「ほう、わらわを女王と言ってくれるのはルイだけじゃ」

「誕生日会、相変わらず豪勢だな。さすが金持ち」

僕は周囲を見回した、昼間にもかかわらず多くの人が集まっていた。

雅と同世代の子供は少なく、どちらかというと大人が多い。

小学生ならいざ知らず、中学生でこのパーティはさすがに大げさだと感じてしまうが。

そう言う意味もあるので、同級生や知人として毎回僕を招待する。


「父上はわらわのために何でもしてくれるのじゃ」

「全く、金持ちの考えることはよくわからない」

「よくわからぬのは、ルイの方じゃ」

そう言いながら雅は、ちらりと隣の毬菜を見ていた。

毬菜はえへへっと、無邪気に笑っていた。


「ルイはわらわという者がありながら、なぜ毬菜と一緒に暮らしておる?」

「僕のクラスメイトが勝手に押しつけたんだ、大翔だって知っているだろ」

「雅様、かのものは……毬菜とこの前一緒に風呂に入っていたそうですぞ」

「な、なんと不埒なっ!」

強く反応したのは雅だ、険しい顔で僕の方を睨んできた。


「お、おい大翔!裏切ったな」

「広哉ったら、裸のあたしのあんなことやこんなことを……あんっ」

「毬菜も悪乗りするなっ!」

照れる毬菜に、僕は思いっきり焦っていた。

前にいる雅は、静かに燃えているようだ。

白い肌の雅が顔を上げると、憎悪の視線を僕に投げかけた。


「ほう……さすがはルイじゃ。ルイは女遊びをしたい年頃じゃからな」

「てか、なにも僕はしていない」

「ほう、まあよかろう。この話はここではやめておこう、後でゆっくり聞くとしよう」

最後に冷たい目線を送ってきたが、すぐに雅はいつも通りに話を戻す。

それにしても雅の肌は本当に白いな。人形みたいだ。


「ああ、そうだ。一応これ」

「プレゼントか?」

「ああ、誕生日だからな。プレゼント」

僕は持っていた長細い箱を渡した。

綺麗にリボンでラッピングされた箱を、雅が優雅に受け取った。


「ありがとうじゃ、ルイ」

「雅だと、本当はいいプレゼントをもらっていると思うが……まあ」

「やはり、毬菜のおかげか?」

再び、雅は毬菜に対して視線を送った。


「いや、多分それは違う」

「昔のルイに戻りつつあるようじゃ、わらわは嬉しいのじゃ」

「それに僕は雅の思っているほど昔も立派ではなかった。そのプレゼントだって毬菜が選んだ」

「……そうか」

プレゼントを持つ手を左手に変えた雅。表情も少しだけ暗くなった。


「雅ちゃんなら、きっと喜んでくれると思って」

「なぜなのじゃ!呰見ではないと思ったら、今度は毬菜なのじゃ?」

いきなり声を荒げた雅、その視線ははっきり毬菜に向けられていた。

強い声を聞いて、毬菜は一瞬笑顔が止まった。


「雅、落ち着け!」

「わらわは知っているぞ、広哉がプレイヤーで、毬菜はコントローラーじゃ。

そうであろう大翔」

「はい、雅様。それがし同様、教楽来 毬菜はコントローラーにございます」

大翔がかしこまった表情で言った。だけど、僕はさらりと言った言葉に驚いた。


「お前、まさかコントローラー?」

叫んだ僕は、思わず自分の弟を指さしていた。



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