表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
四話:僕たちのレトロゲームは誰かを傷つけることだってある
35/129

035

ゲームをして十分後、コントローラーが僕の手から消えていた。

僕の前にいたのは、加布羅兄さん。

マイトナバンジャップは、加布羅兄さんの十八番ゲームだ。

僕は加布羅兄さんがこのゲームをやっていたから、レトロゲームにはまった。


当然のことながら、加布羅兄さんは難なくクリアしていく。

そして、さらに十分後。加布羅兄さんは火の海ステージに来ていた。

もちろんノーミスで、おまけにクリアアイテムまで取り入っていた


「あんなところにあったのか?」

「ははっ、ピラミッドは男のロマンだからな」

途中のステージで、隠し通路を見つけて水晶玉を手に入れた。

あそこのステージは隠し通路を出すスフィンクスでさえ、見えない場所に隠されていた。

通常のプレイでは絶対に探すことのできない、秘密の足場。

そこが水晶玉のある部屋に続くスフィンクスの場所なのだから。


加布羅兄さんは、全部覚えているのがすごい。

しかも、いまだにノーミス。一機も死んでいない。

さらに注目したのはスコアだ。

各ステージに設定されたボーナスを全部取って、スコアも圧倒的に高い。

「70万点……すごい。まだ十一面なのに」

「スコアはいくらでも増やせるよ、無限増殖もあるし」

「マジ?」

「スコアに偏差値が対応しているから、偏差値も無限に増えるんだけどね」

はにかみながら、加布羅兄さんは言ってきた。

それを聞きながら、僕は何かを思い出した。


「1UPが二か所ある場所?」

「そう、あそこだけは1UPが二回できるからね。虎が出るとこ」

加布羅兄さんの言いたいことは分かった。

確かに隠し部屋に行って1UPしていたし。


「でも、そんなのをしたらゲームのバランスが崩れたりしませんか?」

「ピラミッドは男のロマン」僕が疑問に思う毬菜にそう言っていた。

それを見て、ゲームをしていた加布羅兄さんは火の海エリアを淡々と進んでいく。


ついに、問題の火の玉エリアに来ていた。

障害物のように置かれた火の玉、僕はここのボーナスを取ることができなかった。


「あの……」

「なんだい?」

「ここのボーナスってどうやって取るんですか?」

「上から順番に取ればいいんだよ」

「そうじゃなくて……敵とか」

「ああ、ひたすら連打。それしかない」

「マジ?」

「下降のタイミングを見ながら、何度も合わせるしかない。一度見せるから」

そう言いながら加布羅兄さんはダイナマイトを次々と取っていく。

ジャップがまるで、空を泳いでいるかのような動きだ。

高すぎず、低すぎず火の玉をかいくぐって次々と取っていく。

それを見るだけで、僕は昔のことを思い出していく。


「それに、ここはボーナスを完成させると隠し部屋も開くしな」

「あー、そうでしたっけ?」

ジャップを手足のように操りながら、全部のダイナマイトを手に入れた。

それと同時に、上の扉が開く。


「あの隠し部屋って?」

「まあ、見てのお楽しみ」

そう言いながら加布羅兄さんは部屋に入ると、そこには鉄の柵に捕まったジャップそっくりのキャラがいた。

中には宝箱もあるが、一画面の狭い部屋。


「奴隷部屋だ」

「そう、奴隷部屋。ここにジャップの兄弟が捕まっている話だ。

元々はジャップがこのピラミッドに入ったのは、ピラミッドに掴まった兄弟や王族を助ける話だからね」

「それも説明書に?」

「ああ」

しかし、奴隷部屋は狭い。狭い中に四匹の敵が出てくる。

奴隷部屋は敵の巣窟だ。だから攻略がかなり難しい。

逃げる場所も限られるし、兄弟を助けるにも鉄の柵をジャンプで壊さないといけない。

助けるためのジャンプの回数も多く、ジャンプ中によく敵に殺されたな。


でも、加布羅兄さんはまごつくことなく、鉄の柵を壊していく。

そして敵が入口をふさぐ間もなく、兄を助けて奴隷部屋を出て行った。

「すごい……」

「ここも随分死んだからな」

「どうしたら、僕は加布羅兄さんみたいに?」

「広哉、何か怯えていないか?」

加布羅兄さんは、奴隷部屋を出て火の玉エリアに戻ってきた。


「怯えている?僕が?」

「広哉はもっとうまかったはずだ、俺は広哉と一緒にゲームをしていたから分かる。

なんだかプレイに切れがない、不安そうにやっていないか?」

「そんなことは……ない」

「広哉、昔はもっとマイバンだけじゃなく、ゲームが上手かったはずだ」

「じゃあ、僕は……なんで下手になったんですか?」

「そうだなぁ、広哉がよく知っているんじゃないか?」

そう言いながら、火の玉エリアを先に進んだ。


「とりあえず、俺のゲームを見ていれば何かわかるかもしれないね」

加布羅兄さんは適当なことを言いながら、笑顔を見せていた。

結局、それから三十分後。加布羅兄さんはマイトナバンジャップをクリアしていた。

加布羅兄さんのG値は76だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ