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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
三話:僕たちのレトロゲームはお金で成り立っていることもある
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翌日、僕は学校そばのバス停から降りて歩いていた。

僕が学校にくるのは実に二週間ぶりだ、慣れないブレザー姿でやる気なさそうにカバンを担ぐ。

普段は学校にまともに通うことない僕が、自分から来ることはない。

だけど来なければいけない理由があれば、僕は来るしかない。

メールを確認しながら、ダルそうな顔を見せていた。

アイツのペースに最近事が進んで、面倒で不愉快だ。


周りには楽しそうな学生が学校を目指している。

そういうのを見ては、僕は不満になっていた。

(リア充が楽しそうにしやがって)

眉を吊り上げて、周りに距離を作っていた。元々目つきは悪い。

そんな僕の目の前に、視線を感じた。


「あら、珍しい顔。明日は楽しいものが降ってきそうね」

「教楽来……来ていたのか」

教楽来は少しだけ口持ちに笑みを浮かべた。そのまま僕の隣を歩いていた。

教楽来ももちろんブレザー姿だ、眼鏡をかけていてさらに知的いオーラを強めていた。

物静かで大人しく冷静。

優等生この上ないが、変なことを言わなければ美人と巨乳も相まって彼氏も出来るだろう。


「何を見ているのかしら」

「いや……なんでも」

ブレザー越しに見た巨乳を見るのはやめよう。カンが鋭いみたいだ。


「教楽来って眼鏡をかけていたんだ」

「そうね、頭がよく見えるでしょ。人間、見た目は大事よ」

「そうかい」

「幸神君はとてもいい見た目をしているわ、人を怯えさせる鋭い目つきなんか」

「うるせえ」

僕はふてくされながら唾を吐いた。


「でも委員としては嬉しいわ、クラスメイトだから」

「それは去年の話で、今年はクラスが違うだろ」

「そうね、でも委員は今年も変らないわ。あなたのクラスの委員にも言われているし」

「お前はやっぱり変わっているな。クラスも違うのに僕につきまとってくるし」

「つきまとうのは私の趣味よ」

隣を歩く教楽来は、やはり怪しく笑って見せた。

知的というより女詐欺師のようなオーラを出していた。


「幸神君は、学校に来てやる気を見せたのはいい事よ」

「お前たちはこんな退屈な場所に来て飽きないな」

「飽きないわ、あなたと違うもの」

教楽来に言われて僕は周囲を見回した。

目が合った学生は、なんだか僕のことを避けるように離れて行く。

僕は目つきが悪くなったな、こういうところに来ると理解できた。


「でもサボりの幸神君が、何で学校に来る決断をしたの?」

「そりゃあメールが来たからな」

「幸神君はメールで動く人なのね」

「違うよ、呼んだ奴のメールで来る。前回のお前といい、面倒だ。

二回連続でクラス委員が僕を呼ぶなんて、なんという嫌がらせだ」

「あら、ならばこれからは毎日毬菜の秘密を一つずつ暴露すれば。あなたは毎日来るのね」

「そんなにあるのか、話のネタ?」

「さあ、私は毬菜とずっと暮らしてきたから。彼女のことは全部わかるの」

「その割には毬菜に飽きただろう」

僕の突っ込みに、教楽来はいきなり無言で僕の肩を掴んできた。

冷たい目が、僕の顔を見ていた。


「なんだよ、教楽来?」

「私は飽きていないわ、毬菜はとても興味のある存在よ。

それに私は飽きることがない女」

「飽きることがない女?」

「ええ、飽きることはないわ。常に世界は刺激で満ち溢れているもの。

今日だってあなたが学校に来たでしょ、これだけで刺激あるものなの」

「僕にはなんの刺激もない世界だ、終わった世界だからな」

「それはあなたが感じていないだけ」

などと言いながら教楽来は、校門の前まで先頭切って歩いていく。

そんな教楽来のことを追いかけようとして、僕は追いかけるのをやめた。

奥にある校門の前、そこには僕を呼びつけた一人の男子学生が腕を組んで僕を見ていた。

その男子学生はブレザー姿に、ナチュラルな金髪の男だった。

何より彼こそが僕を呼び出した男だった。



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