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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
二話:僕たちのレトロゲームは理不尽を解明することもある
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僕達がいた地下街の上はビルが立ち並ぶ都会。

九州屈指の大都会で、いつも僕が遊ぶのには飽きない場所だ。

まあ、それでもおしゃれなブティックや、高級デパートに興味はない。

そんな大通りを一歩奥に入ると、そこには飲食店が乱立するエリア。

歓楽街のような雰囲気もあるが、その路地を抜けた先に教楽来が僕を連れてきた。

それは、一つの雑居ビル。そのビルの一階にいはテナント募集の貼り紙があった。


「なんでここを知っている?」

「あら、意外だったかしら」

「お前はレトロゲームを知らなかったはずだ。

それなのになぜこの場所を……ファ○コンハイムの場所を知っている?」

「そうねえ、私はなんでも知っているの。神様だからよ」

教楽来はドヤ顔で僕のことを見てきた。

僕はテナントの入っていない雑居ビルの建物を、じっと見ていた。

小学生のころは何度も来たけど、呰見が死んでからいつしか来なくなった場所。


「教楽来が神様なこと、あるモノか!なにか理由があるのだろう」

「そうね、理由がなければ私も理不尽よね」

「さっさと白状しろ」

「迫るのね、血に飢えた幸神君も野性的よ。格好もワイルドだし」

教楽来に僕の上から下まで見てきては、怪しく笑う。

いつも思うけど、教楽来の怪しい微笑みはかなり怪しい。


「なんでもいい、教えろ」

「そうね、私のコントローラーかしら」

「教楽来のコントローラーか、やはり気になるな」

「幸神君には、教えてあーげない」抑揚ない声で、僕から静かに二歩離れた。

「こうなったら拷問するしかないな、教楽来を拘束して……」

「そのまま私をいやらしく縛り上げて、あんなことやこんなことをするのね。

女の子と話しができないタイプじゃない幸神君だから、ムラムラしちゃうでしょ」

「しねえよ!」

僕は教楽来に手を伸ばしたが、教楽来がしっかり身構えていた。


「お前と話すと疲れる」

「そうね、本題に入りましょ」

「ああ、なんでここに連れてきた?」

「毬菜が言っていたのよ、昨日。明日は幸神君とここに来るように」

「じゃあ、毬菜が知っているのか?」

「どうやら、毬菜にメールが届いたみたい」

「メール?オシリスのか」

「そう……らしいわね。でも差出人にメールが届かないの。アドレスが無いという事らしいわ」

教楽来は、スマホに登録したアドレスを見せてきた。


「写したのか」

「それよりここってなんなの?」

「レトロゲーム専門のゲームショップだよ。もちろん昔はあったけど」

「そう……」

ぼんやりと教楽来は四階建てのビルを見上げていた。

上には人がいる様子があるが、一階の店舗はがら空きだ。


「ねえ、あなたはレトロゲームをやっていたんでしょ」

「ああ、師匠がいるからな。師匠は『マイトナバンジャップ』が得意なんだ。

まあ僕はここで初めて、『ソノサンのガキ』っていうレトロゲームを買ったんだ」

「何それ?」

「もちろんマイトナバンジャップも好きだ、後はゾビアス……マッチー……魔田村に……」

「随分と話すとき楽しそうね」

教楽来に止められて、僕は記憶を呼び戻すのをやめた。


「なんだよ、いいだろ」

「あなたにそう言う趣味があったとは思わないわ」

「昔の話だ、今はそこまで上手くない。小学校の時はやったけど……やっぱりやめた」

「きっかけは?」

「単純だから飽きた」

投げやり気味に言うと、教楽来はじっと僕の方を見てきた。

観察をするかのように見てくる教楽来に、僕は視線を逸らして道路を見ていた。


「本当かしら?」

「本当だ」

「ならば、やっぱり私の見立ては本当だったのね」

「どういうことだ?」

「あなたはレトロゲームが上手い」

「上手い……ハズだった」

昨日のオシリスゲームの結果を、僕は納得できない。

最もオンラインで誰かと競うこともなかったが、こんなに自分ができなかったのが不満だった。


「大体昨日のマイトナバンジャップだって僕は最後までクリアしたんだ」

「そうなの、私はクリアしていないわ」

「ならば、なんで僕がお前に負ける?」僕はビルに、教楽来を押し付けた。

水色のワンピースの教楽来は、勝ち誇った顔を見せた。


「理不尽だと思う?」

「当り前だ!このゲームは、僕の師匠が得意なゲームなんだ。

僕にレトロゲームのきっかけを、与えてくれたゲームなんだ。

僕は初めてクリアした、テクニックを必要とする難しいレトロゲームなんだ。

ずっと昔に発売されたゲームで、周りにやっている人間はほとんどいないゲームなんだ。

そのゲームでなぜ……」

「そうね……あなたがやる気がないからじゃない」

そう言いながら僕の手を振り払った教楽来。

どこか目つきが険しいようにも見えた。


「なんだよ、僕はやる気が……」

「ないのが幸神君の特徴でしょ、勝てるわけないじゃない」

「僕はゲームに負けたくない、やる気がある」

「嘘ね、あなたにはやる気を感じられないわ。

そうそう、一つだけいい事を教えてあげるわ」

「なんだよ」

「このゲーム、ステージごとに脱落するでしょ。

脱落した時、ゲームに参加したコントローラーは死ぬわ。

つまりあなたの手で毬菜(コントローラー)を殺すことになるのよ。

あなたより小さなかよわい女の子を、あなたはあなたの手で殺す。

これはれっきとした殺人よ、だけどね罪にならない殺人」

「くっ!」

僕は教楽来を睨んだ、だけど教楽来は臆することなく僕をじっと見いていた。

表情も変えることなく、瞬きもしないで僕をじっと見ていた。

沈黙が数秒支配したのち、僕は目を逸らした。


「もう二度と言うな!」

僕は不機嫌そうに教楽来に背を向けていた。



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