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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
二話:僕たちのレトロゲームは理不尽を解明することもある
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教楽来姉は、目を細めては僕を誘っているようだ。

長い髪の教楽来姉は、顔立ちのいい美人。

美人な上に知性も兼ね備えた、できる女の雰囲気を出していた。

そんな教楽来姉の顔が、僕の前にある。教楽来姉は頼んだミルクを飲みながら、僕の顔を眺めてきた。


「毬菜の秘密ってなんだ?教楽来が毬菜を嫌っていることか?」

「そうね、毬菜とは合わないの。オシリスについて」

「なんでオシリスが出てくる?」

「さて、質問よ。理不尽と合理、オシリスはどっちだと思う?」

「その質問だと合理ではなく理不尽だな。なんというか存在があやふやっていうか」

「でも存在している、彼にはいくつもの謎があるのよ」

教楽来はミルクを飲みながら、喘ぎ声のようなため息をつく。


「あら、失礼」

「オシリスは確かに謎も多い」

「結構スルーするタイプなのね」

「は?何が?」

「私がとても極めて色っぽい声を出しているのに。

年頃の娘が、こんなにも感じやすい声を出しているのに。しかもミルクで」

「教楽来は何がしたい?」

「何ってデートじゃない」

「教楽来的イベントはいい」

僕にはオシリス以上に、教楽来の方がよっぽど謎だ。


「そうね、私は話を脱線させるのがとても好きよ」

「で、オシリスの謎を解明したのか?」

「そうね、それが私の目的。私は理不尽が許せないの」

「なるほど、お前の考えからすると理不尽なオシリスを探るのが狙いか」

「そうね、私はオシリスの化けの皮をはがすためにゲームに参加したの」

「暇なんだな」

「そうね、人生の大半は暇でできているわ」

教楽来姉はつまらなそうな顔で、カラになったコップを見ていた。


「そのオシリスが毬菜と関係があると?」

「ええ、そのようね。ほかのコントローラーと毬菜は違うみたい」

「教楽来、お前にもコントローラーがあるんだよな」

「あるわよ」

「一体誰なんだ?」

「毬菜よりは少なくとも信用のおける人よ」

「ふーん、そうか」

教楽来姉は学校ではかなりの優等生だ。

まともに話さなければただ頭のいい女子だからな、学校の人脈は分からないが評判はよさそうだろう。

ある意味、素行の悪い顔を僕にだけ見せているわけだが。やっぱり去年のことをいまだに根にもっているな。


「オシリスと毬菜のつながりって?」

「そこまでは分からないが、記憶が関係していると思うの」

「記憶ねえ」

一部記憶が抜けているって毬菜は言っていた。


「毬菜はなんで記憶が抜けているんだ?」

「さあ、分からないわ」

「分からないって、姉妹だろ。一応」

「姉妹と言えばそうだし、姉妹じゃないと言えばそうね」

「なんだよ、その意味深な答えは?」

「私と毬菜は血が繋がっていない姉妹なのよ」

教楽来姉はそう言いながら、僕の頬に手を当ててきた。

教楽来姉の言葉に、僕は単純に驚いた顔を見せた。


「血が……繋がっていない?」

「私は両親がいたけど、父は死んだわ。私が幼いころに、借金抱えて自殺したの」

「マジ?なんか悪い」

「気にしないで、私が勝手に話し始めたから」

暗い話だけど、教楽来姉はしっかり前を向いて話していた。

僕の頬に手を当てて、淡々と語っていく。


「父が死んだ。そして父は借金を残してしまった。

それを返すために、母は死に物狂いで働いたわ。

だけど、残した借金は全部返せなかった。そこで……三年前の正月に入籍して、再婚」

「もしかして再婚した相手が、毬菜の父親ってことか?」

「そう、だから私と毬菜は血が繋がっていない。

母は結婚相手を、東京に住む会社社長と結婚したの。自分の借金を返すために」

「それってまるっきり金目当て感、丸出しじゃん」

「一応写真があるのよ……見るかしら?」

そう言いながら、教楽来姉はスマホで写真を見せてきた。

そこにいたのはひげを蓄え、髪がぼさぼさの中年男、眼鏡をかけていて胡散臭い宗教団体教祖風だ。

場所は花屋っぽいが、金を持っているようには見えない。


「この人って、会社の社長だろ」

「そう関東近郊で花屋のチェーン店を営んでいる社長らしい。

でも何か気づかない?」

「う~ん、なんか胡散臭い」

「いい着眼点ね、それもそうだけど毬菜とは全く似ていないのよ。

普通の親子なら、何か似ている部分があるはずよ。だけどそれがこの男にはない」

「確かに……教楽来姉が言うなら……姉じゃないな教楽来」

「何かしら?」

「教楽来は会ったことがあるのか、この人と」

「一度だけ、東京に行った時に会ったわ。私の家は、結婚してもずっと別居生活しているの」

「お前の母親は、なんで東京に住むこの人に知り合ったのか?」

「お仕事の関係よ、フフッ」

やっぱり怪しい笑みを浮かべた教楽来姉……もとい教楽来。

教楽来自体も、もしかして夜の仕事でもしているのだろうか。


「結婚してお金を払う代わりに、娘を預かってほしい。娘にはどこどこの小学校と中学校を指示したわ。

もちろん、お金は全て向こうが払うみたい。

それがプロポーズの答えだって、母は言っていたわ」

「なんかまるで金の貸し借りの契約っぽいな」

「そうかもしれないわ。母も毬菜とも親子の関係はないし」

「でも花屋……か」

僕は何か忘れている気がした。それを思い出すことはできないが。


「そうね。五年前から毬菜とは一緒に暮らしているが、全くの他人と言ってもいいわ。

そんな中でも、毬菜が言うオシリスに会いたい。これは明らかに理不尽よ。

ピラミッドが出来て、父がいる東京がピラミッドに封じ込めた。

でも、毬菜のいう事はオシリスに会いたい。

記憶が一部抜けている、そんな母が怪しい父と結婚したことも理不尽なら……」

「毬菜のオシリスに会いたいも理不尽……」

「そういうことよ、とても理不尽じゃない」

教楽来は僕の頬から手を離して、空になったコップを指で回していた。


「だから私は謎を解くの、あなたにも力を貸してもらうわ」

教楽来は難しい顔で僕を見ていた。


「僕は面倒なのは嫌いだ」

「まあいいわ、まだ時間がるでしょ」

「僕は忙しい」

「サボリの幸神君、私のデートについてきてもらうわ」

「断る、毬菜のことで……」

「そう、でもこの場所はあなたも気にいると思うけど」

そう言いながら教楽来はスマホを見せていた。

それは地図、だけどその場所を見ただけで僕は驚きに包まれた。




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