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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
一話:僕たちのレトロゲームはスタートボタンで始まることもある
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002

ピラミッドがいきなり海に現れて三か月、日本は一気に国土を大半失った現実を知る。

地震と共に現れたピラミッドは、本州や四国、北海道までもピラミッドで覆ってしまった。

唯一九州だけがピラミッドから取り残された。

ピラミッドの壁の中は無事なのか分からない、連絡の手段がなくなった。

海底までピラミッドは伸びていて、海さえも分断されていた。それは完全に隔離された世界。


ピラミッドが突然出現してから、最初はいろいろと周りが変った。

何より本州の情報が全く入らない、食べ物の買い占めが起きてコンビニから商品が消えた。

だけどそれも三か月で変わった。正確には二週間ほどで元通りだ。

地震による被害も、沿岸部の津波被害さえも大きな問題は直接九州には被害がなかった。

だけど何より一つだけ、僕たち家族には残っていた変化があった。


「親がいなくなった」

そう、僕たちの両親は本州で仕事をしていた。

両親の今の仕事は大阪勤務、プログラマーをしていた。

つまり両親は今、二人とも本州のピラミッドの中にいるのだ。

衛星電話さえつながらないピラミッドの中が、気になるがどうすることもできない。


しばらくは、両親が残した貯金を使ってやりくりするしかない。

幸い退職保険みたいなのが入っていたのが救いだ。

ローンもあるが、保険と貯金でやりくりすれば僕たち兄弟が暮らすに困らない。

なにより、親戚に助けを借りるのがなにかと面倒だ。


高二になった僕は、平日の午前中でも関わらずにチェック柄のシャツを着ていた。

私服姿の僕は、二階建ての家のリビングにいた。

ズボンに手を突っ込んだまま、一人しかいないリビングで台所を見ていた。


(大翔は相変わらず真面目に学校に行ったようだ、ご苦労なことだ)

綺麗に片づけあった流し台を見て、そのままバスケットに残ったロールパンをかじった。

ぼんやりとテレビを見る、いつも通りの情報番組がやっていた。テレビ画面の中は平和そのものだ。

天気予報がちょうどやっていて、全国的に曇りらしい。なるほど今日は周りが暗いわけだ。


(学校なんか行く気にならない)

僕は今月、一回しか行っていない。しかも行ってはすぐに早退していた。

親もいないので誰も僕を咎める者がいない。

テレビをぼんやり見ながらも、鏡で自分の冴えない顔を見ていた。


(何のために学校に行く、ただ不幸になるためか?)

僕は小学校まで夢を持っていた。

だけど、小学校を卒業するころ僕は激しい脱力感に襲われた。

中学を何となく行く中で、僕の心はずっとぽっかり空いたままだった。

僕はこの世で一番大事なものを失った。


(こんな世の中に生きていて、意味があるのだろうか?)

そんなことを思いながらも、テレビ画面は映し出していたのはピラミッド。

黄色い無機質なピラミッドが海に浮かんでいた。

しかし大きな変化もなく、ただピラミッドの現在の状況が生で流れていた。


(何も変わらないクソつまらない世界だ)

僕のいたこの世界は、ピラミッドが出た非現実なことが起きても大きく変わることはなかった。

テレビ画面には、一月某日のオシリス登場のシーンが流れていた。


(つまらない、結局あの男は口だけか)

リアルとかけ離れた出来事が起きて、僕は少し期待していたのかもしれない。

何か自分の中に変化が起こるのではないのかと。

でも現実は違う。

僕は満たされないし、変わったことは親がいなくなって生活が苦しくなったことぐらい。


(何も変わらない。どんなことしても戻ってこない。あの日々は……)

昔に感じた高揚感も、恋心も僕に戻ってこない。

結局、僕の生活は退屈が支配していた。


「退屈でつまらない」

僕はなんとなく独り言で愚痴った。


「そこの退屈な君?」

そんな僕の愚痴に反応するかのように、どこからとこなく声が聞こえた。女の声だ。

いきなり聞こえるテレビ以外の声に、僕は眉をひそめて周囲を見回した。



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