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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
二話:僕たちのレトロゲームは理不尽を解明することもある
16/129

016

それから二時間後、台所で僕がパジャマ姿で立っていた。

包丁を叩く音が規則正しくリズムを刻む。

ピラミッドが現れたあの日から、家事は自然と住んでいる僕と弟二人で分担することになった。

弟は洗濯と風呂掃除、ゴミだし……まあほぼ全部の雑用。

だけど唯一できない料理こそが僕の仕事になる。


こう見えても僕は料理がそれなりに得意だ。

悪夢を見て胸糞悪い中、キャベツを切って卵をフライパンで焼く。

手際良く料理で僕は、一つ一つ朝食のメニューを作り出していた。


「広哉はやっぱり上手いですね、料理」

「なんでいるんだよ……毬菜」

僕の隣には、なぜか微笑んで僕の料理を見ている毬菜がいた。

毬菜は八神中の薄ピンクのジャージを着てニコニコしながら、台所のそばで腕枕しながら見ていた。


「卵は半熟がおいしいですよね。トロトロ~」

「何でお前がここにいる?」

「相棒は一緒に暮らすって、広哉が強引にあたしを奪ったから」

「嘘つけ」

毬菜のでたらめに、僕は適当に突っ込んだ。

毬菜はたまに変なことを言う、こういうところは教楽来姉と一緒だな。


「それで結局、家に帰らなかったんだな」

「うん、広哉と一緒の部屋がよかった?」

「馬鹿ッ、大翔がいきなりビックリしていたみたいだろ」

「ああ、そうだね。でもなんか大翔先輩は落ち着いているというか……」

「あいつはどこか変っているからしょうがないだろ」

手際よく僕は玉子焼きを作ってはさらに盛り付けた。


「大翔先輩はそれでもあたしを受け入れてくれました」

「大翔は好きなやつがいるからいいんだ。ほかの女には目もくれないだろう」

「へえ、そうなんだ。広哉はいるの?」

僕は毬菜の質問を無視した、急に口を閉じて黙々と二皿目の玉子焼きを作り始める。


「広哉?どうしたの?」

「毬菜、これ食ったらは帰れよ、お泊り会は昨日だけだ」

「それはできません」

さっきまで明るかった毬菜の顔が、急に暗くなった。

毬菜の顔を無視したまま、僕は料理の手をやめない。

フライパンで黙々と卵をずっと焼いていた。

そんな大翔はやはり朝早くに出かけていた。今日は休日だから学校はないはずだが。


「教楽来と何があったか知らないが、僕たちの家では三人を養うほどお金がない」

「大丈夫です、ジャーン!」取り出したのは引越センターの通知。

そこには明日、ここに引っ越しの荷物が届くことになっていた。

いきなりで、代金は向こうで払うらしいが。


「いつのまに!」

「私はお姉ちゃんに嫌われていますから、家に居場所がないんです」

「あっけらかんに言うな!」

「でも大丈夫、お金はちゃんとありますよ」

そう言いながら毬菜が取り出したのは、銀行通帳。

満面の笑みを浮かべながら、毬菜が僕に見せてきた。


「何が教楽来とあったか知らないが、男二人の兄弟のところにくるのはまずいだろ」

「それは心配ですね、でも大丈夫です。広哉は童貞さんだから」

「なんだよ、勝手に決めるな」

「昨日、ポチッとされて……それで気づいたんです」

「変なことに気づくな」

「だって広哉の押しがなんだかやわらかったから」

そう言いながら顔を赤らめてもじもじとしていた毬菜。

僕は呆れながらなぜか自分の掌を見てしまった。

あそこで確かに僕の人差し指は、毬菜の胸を触ったんだよな。


「やわらかいとか思ったでしょ」

「ち、違うっ」

「あたしの胸は、ちょっと堅いんだよね。

ああそうそう、お姉ちゃんはおっぱいにボタンがないから。今度確かめてみるといいよ」

「ボタン?そうだな……毬菜」

僕は二つ目の玉子焼きをさらに盛り付けて、野菜サラダをプレートに乗せた。

そばにいた毬菜は、ずっと僕の料理を興味深く観察していた。


「お前は何者だ?」

「あたしはコントローラー、説明したじゃないですか。広哉はプレイヤーです」

「あのゲームはなんだ?オシリスゲームはどういうルールなんだ?」

「そうですね……それではゲームの話をしませんか?」

僕は完成させた玉子焼きとサラダのプレートを毬菜に見せた。

それを見て、毬菜の表情が明るく開けていた。



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