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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
一話:僕たちのレトロゲームはスタートボタンで始まることもある
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ビルの一階、窓ガラスが見える場所で僕はゲームをしていた。

何もしなくてもゲームの仕方は分かる、このゲームもそんな気がしていた。

シンプルで、難しい説明書がいらないゲーム、それがレトロゲーム。

コントローラーが僕の手元にある、つまりこのゲームを動かせるのは僕だけだ。

闇に染まった博多駅の駅舎が、僕のコントローラーで全部動く。

そして何より、僕がコントローラーのスタートを押すと水色の画面の下に黄色いものが見えた。


(ピラミッド……これは?)

一瞬にして、僕の心はドット絵のピラミッドに目を奪われた。

端から見れば、それはただの黄色い山に見えるだろう。

だけどその画像は、はっきりと僕に見覚えがあった。


「マイトナ……バンジャップのピラミッドだ」

それはレトロゲーム、『マイトナバンジャップ』。

横スクロールのアクションゲームで、主人公のバンジャップがピラミッドにさらわれた王族を助け出す話だ。

このゲームも、三十年近く昔に発売されたレトロゲームだ。


バンジャップは、敵を直接攻撃することができない。敵に触れると一発で死ぬ、とても非力な存在だ。

そんなバンジャップは、人並み外れたジャンプ力がある。

ジャンプで宝箱を開けることができ、宝箱に隠されたパワーアップコインを手にピラミッドを進んでいく。

主人公のバンジャップだけど、なんか毬菜っぽいぞ。

猫耳にマント姿、童顔で笑顔のデフォルメ毬菜がそこにはいた。


(そうか……僕が毬菜を操るってこれの事か)

バンジャップの代わりに小さくなった毬菜が、ゲームステージに出てきた。

見えるのはピラミッド内部だろうか、石の壁があちこちに見える。

それにしても木が生えているな、ピラミッドの中なのに。


子供のころやった時は、マイトナバンジャップはクリアしたこともある馴染みのゲーム。

ビルの中にいるからよくわからないが、音楽はチープなやつなんだろうな。

(外に出て聞いてみたい)

出てきたステージは僕なりに思い出したのだが、このステージは一面じゃなかったな。

そう言いながら昔の記憶を辿りつつも、僕はゲームの難所を次々とクリアしていく。

ただし敵に触ると即一機失ってしまうので、慎重に進んでいく。

残機は三機、最初に表示されていたな。

敵はミイラで出てきて、そこからオウムや空飛ぶ甲羅?何かに変身してきた。


敵に直接攻撃はできないから、逃げながらゴールを目指す。

途中にあるリンゴ型ダイナマイトを、取れるものだけを取って先に進んでいく。


さらに少し先に見つけた宝箱、それをジャンプで取ると顔のような模様つきのコイン。

パワーアップコインだ。このコインを取ることで、パワーアップができる。

パワーアップは三段階。

Mというのがパワーアップアイテムのストックだ、最大九個まで溜められる。

(溜めすぎると……そう言えばなんかあったような……忘れた)


宝箱を探して、三つ目パワーアップアイテムを取った。すぐ近くの敵の方に向かっていく。

僕は一気にパワーアップボタンを三回押して、パワーアップさせた。

毬菜の色が、赤から青……いや緑色に変わった。


それと同時に周りにいた敵が、コインへと変わっていく。

どんな敵も三秒間だけコインで攻撃されない。


(そうそう、これこれ……)

僕はコインに変わった敵をどんどんとっていく。

触れても死ぬことはなく、スコアが増えていく。


(おっと、こんなところで遊んでいる場合ではないか。急がなければ)

僕はそのままゴールを目指す。

宝箱で一個だけパワーアップアイテムを取って、先を急いでいた。

すると二択の道が見えた、正しくは上下の道。


(せっかくだから上を行ってみよう)

すると、敵が少ない上の道。

上には敵が出てくるが、次々とかわして奥を目指す。

そして僕が一番奥に来ると行き止まりだと分かった。


(くそっ、行き止まりか。だけど宝箱たくさんだ)

僕はたくさんある宝箱の上で手当り次第ジャンプで開けていく。

パワーアップコインに、白い袋はスコア。さらに出てくるのは赤いドリンク。


(ドリンクを取ると、制限時間が増えたんだな)

確かにドリンクを取るとT(制限時間)のカウンターが10追加された。


制限時間がある、Tの横にある数字が一個ずつ減ってカウントされる。

この時間が無くなると終わり、少しゆっくり進んでしまったようだ。


(確か、下に降りるにはどこか床の上でジャンプさせるんだったな)

僕は適当な上の床をジャンプすると、下に抜けていく。

抜けた先には、すぐにゴールゲートが開いていた。迷うことなく毬菜をゴールに向かわせた。


(出口だっ!)

ステージの半分の敵と宝箱を無視して、僕は空いている入口に入った。

だけどこのゲームは終わりじゃない。


駅舎に映されたゲームの部屋は、一マスだけの狭い部屋に切り替わった。

そこにはダイナマイトがきれいに列を作っておかれていた。


(最後のステージ、王家の財宝部屋。これまでしっかりあるんだ)

そこは『王家の財宝部屋』と呼ばれる部屋。

言ってしまえばボーナスステージ、だけど敵が出てくる。敵は二体。

狭い部屋で逃げることができないが、ダイナマイトを全部取れば先の出口が開く。


(さっさととろう、一応ダイナマイトワープは……有るか?やはり懐かしいな)

僕は素早くジャンプをさせて、どんどんダイナマイトを取っていく。

ダイナマイトが細かく火がついているようだけど、それを見ないで僕は近いところから取っていった。

そのまま敵をうまく引き離しながら、ダイナマイトをすべて回収。

すると上の方の出口が開いた。


「ずらかれ~」

となぜか声を上げてしまった僕は、敵を背にして出口へと出て行った。


(よしっ!)

そう、僕は最初のオシリスゲームをクリアしていた。

制限時間は47秒残した僕のタイムが、そのままスコアに換算された。


そして出てきたのが、普通のマイトナバンジャップでは出てこないリザルト画面。

だけどレトロゲーム感が出ている画面は、メンバーの名前がどんどん出てくる。

一人はおそらく教楽来だろうか……僕の順位|HIGH SCHOOL・M《男子高校生》は一位。

だけどどんどん下がっていくのが見えた。

気がつくと僕の順位は『HIGH SCHOOL・M』は最後になると最下位になっていた。

僕はそれを、じっと駅舎のプロジェクションマッピングを通してみていた。


(なんでなんだ?)

僕は最後まで理由が分からなかった。自分の順位の意味が。


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