126
手狭な部屋がいつも心地よい。
僕はいつも通り加布羅の部屋に来ていた。
ここはよく落ち着く場所だ、昔も今も変わらない。
僕が尊敬する兄貴は、手狭な部屋でレトロゲームをやっていた。
「結局いなくなったんだ」
「ああ、毬菜は僕の未来の娘だからな」
「そうか、広哉は結婚するんだ」
「えっ……ちょっと待って」
いきなりの話の飛んだ内容に、僕は明らかに取り乱していた。
毬菜はいなくなって、一週間が過ぎた。
本州を覆っていた巨大なピラミッドは無くなり、世界は平和になった。
毬菜のことは話すしかなかった、加布羅兄さんにはその記憶が残っていたからだ。
世間ではピラミッドのことが忘れられているのに、皮肉な話だ。
「オシリスがまさか広哉だとは、思わなかったけどね」
「本当だよ、僕だと思わないよ」
オシリスが仮面を外して、僕は知った。未来の僕が過去の時間軸に、投影していた。
プロジェクションマッピングという形式を使って、未来から送っていたデータがレトロゲーム。
このゲームの勝者が過去から生まれなければ、時間軸ごと消滅させる気だったらしい。
そう考えると、僕は世界の危機を僕は救ったことになるのかな。
「いろいろ急に出てきて……」
「それでも今、広哉がいる世界が君の居場所なんじゃないか?」
「そうだな」
そんな時に、ゲームをやめて一人の女の子が出てきた。
「いるか?広哉?」
そう言いながら出てきたのは真っ白なワンピースを着た女の子。
だけど目つきは、相も変わらず険しい経営者の姿を見せていた。