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僕は呆然としていた。
目の前のプロジェクションマッピングは僕の勝利を伝えていた。
勝利画面を画面の中で、僕は固まったまま画面を見ていた。
ゲーム画面では、毬菜がジャンプキックで中央にある銅鑼を鳴らす。
毬菜の勝利に、僕はじっと画面を見ていた。
「本当に世界を救ったのか?」
「……この世界が正解だった」
プロジェクションマッピングのオシリスは、静かにつぶやいていた。
「ああ……僕は思い出したよ」
「勝因をか?」
「勝因は僕が勝ちたいと思う心だ」
勝ち誇った嬉しそうな毬菜をじっと見ていた。
なぜか来ているチャイナドレスを脱ごうとしていたが、それさえも視界に入らない。
「そう、ゲームに勝つには勝ちたいと思う心だよ」
「昔の僕は何も知らなかった。
だけど知ることで、大人になるにつれてそれを忘れていた。
レトロゲームは発想力も大事なんだって」
「君が勝つには、発想が大事なんだ。
このゲームは何せ、全てを知った私が作ったゲームなんだから」
「マイクで指示をしたんだろう」
「そう」
毬菜は一人の人間で独立していたんだ。
それが僕のゲームに対する答えだった。
「それは正しい結論だ」
「ああ、毬菜が僕を勝たせてくれた」
そう言いながら毬菜を微笑ましく見ていた。
いつの間にか地震が止まっていた。
「なら君には何も言うことはない。このゲームを閉じるとしよう。
このゲーム本来の役目は終わったのだから」
そう言いながら、目の前の画像が揺らめいていた。
そして、僕のそばには毬菜がいた。
「毬菜……」
「そうだね、ごめんなさい」
「ああ」
それは、毬菜との別れも迫ってきていた。
毬菜は泣いていない、むしろかなり明るかった。
「辛くないのか?」
「辛くないよ……だって」
毬菜は笑顔を崩さない、その一方で目には涙を見せていた。
「あたしとはいつかまた……絶対に会えるのだから」
「……ああ」
そう言いながら毬菜は消えて行った。
僕は最後まで、毬菜が消えた場所を見ていた。
そして、出てきたのが呰見だった。