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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
十二話:僕たちのレトロゲームは世界を救うことだってある
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とうとう最後の一機になった。

だけど僕は九戦目にして初めてダメージを与えることができた。

まあ、戦いが始まればすべてがリセットされる。

ダメージの蓄積はない。


「ダメージの蓄積は……ないな。残念だ」

最後の戦い、負けたらピラミッドが九州を覆ってしまう。

それは世界の終わりだ。


「世界の終わり」

「そう、ゲームの負けは世界の終わりを意味する。

ゲームでしか止められない君の運命」

「いいのか、オシリスは?」

「ええ、構いませんよ。私にとってこれが運命なら世界は無くなってもいい。

君が選んだ退屈な世界に私が存在する理由はありません」

オシリスは覚悟を決めていた。


「このゲームって、オシリスはそれを望んでいるのか?」

「いらないだろう、君は世界に絶望して死ぬんだ」

「死なない……死のうとは思わない」

「嘘だ……今、君は社会に出ていないただの力なき男子高校生だ」

「なんだよ……これって?」

「いろんな時間軸で行われたゲームだ。

いろんな時間軸で、行われてきたゲーム。だけど全てがことごとく失敗した」

「それでここか?」

「存在しない時間軸は全て淘汰される、だから負けたら終わりなのは社会のルールだよ」

オシリスは難しい顔を見せていた。


「このゲームをあちこちでやっているのか?」

「私はこのままだと世界に絶望して自殺する。

どこにもその理由が分からない、だから時間を探してゲームを進めた」

「このゲームは何の目的で?」

「簡単だ、残った世界が真実だから」

「残った世界?」

「そう、残らなければ世界は終わるだけだよ」

オシリスはマスクで隠すこともなく、僕にそう告げてきた。

そのオシリスが僕ならば、僕は決着をつけないといけない。

これは僕の問題なのだから。


呰見の死は、僕の世界を閉ざしていたんだ。

だから僕はその死を、罪を、行為を許せなかった。

起きたことを、忘れようと無視し続けたが、無気力になった。


「残らなければどうなるんだ?」

「世界が闇に包まれる。原因不明のピラミッドの中で、人はピラミッドの閉じ込められる」

「まさか……」

「人はバラバラだ。全てが隔離されて、個人という檻の中で死んでいく」

「違います、パパ」

それを否定したのは毬菜だ。

毬菜がずっとオシリスの方を見ていた。


「きっと未来はあります、少なくともあたしとパパが存在しているように」

「そうだな……そうでありたいな……」

「分かったよ、じゃあトドメをさすから、ゆっくり寝ていてくれ。未来の僕」

僕はようやく分かった。

オシリスに勝つための、最大の方法を。

これ以上ない、最高のやり方を。


「それならば、僕が世界を救ってやるよ」

僕はオシリスにそう言い放った。


オシリスのゲームは最後の一戦になった。

イーエルファンクーは、ゲームとして最高だ。


毬菜を動かして、未来の自分に戦わせるのだ。

その毬菜さえも僕の未来の娘なんだ。

複雑すぎる敵に、僕は自分を奮い立たせていた。


(この戦いは、オシリスゲームの本質は、毬菜がカギだったんだ)

毬菜を動かしながら、間合いを詰める。

最初にダメージを当てた方が勝てる。

後は相打ちしかない。

オシリスはこのゲームを操作しているわけではない。

レトロゲームのイーエルファンクー自体、単なる対戦格闘ゲームではないのだ。


(毬菜、動いてくれ)

僕は願いながら、コントローラーを操作していく。

ロジックも……これなら通用しない。


「毬菜……いまだ」

僕は上を押しながらジャンプさせた。

それと同時に毬菜がジャンプで向かっていく。

だけど僕は攻撃ボタンを押さなかった。


パンチもキックも押さない、僕の気持ちが彼女を動かす。


(絆……だな)

僕は毬菜にすべてを任せていた。

きっとそれは普通のゲームではできないだろう。

だけど、毬菜はコントローラー。そして一人の人間だ。

手裏剣は出てきたが、タイミングがずれた。


「広哉は終わらせたいんだね」

毬菜の最後の言葉を聞いて、毬菜はジャンプ後間合いを詰めた。

すぐさま、毬菜はオシリスにパンチを撃つ。


そして、初めてダメージを与えた。

僕は毬菜にそのまま畳み掛けさせた。


「いけるっ!」

だけどすぐさまオシリスは反撃をしてくる。

僕はすぐにジャンプキックに切り替えていく。手裏剣がタイミングよく出てきた。

近距離も遠距離も敵には関係ない。


「いけっ、毬菜」

僕は毬菜に一気に攻撃を仕掛けさせた。

毬菜が僕の指示通り攻撃を繰り出していく。

そのままオシリスの体力をどんどん減らしていった。


……そして

「勝った」

オシリスはとうとう倒れたのだった。



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