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地震は全く収まらない。
足場の悪い岩山で、僕は悪戦苦闘。
山頂を切り立った場所だからある程度は広い。
だけど、山の上の地震はやばさがあった。
「タイムリミットはそれほどないぞ」
オシリスが再び僕を挑発していた。
「だけど、勝たないといけない」
「そう、全く夢もない話だ。残念ながら広哉にこのままだと勝利はない」
「確かに勝てそうもない」
毬菜の断末魔、これで八機死亡。
残り二機、どうあがいても勝てる見込みはない。
そんな僕は、セレクトボタンを押しながら毬菜に声をかける。
ボタンを押しながらだと、毬菜と僕の会話が聞こえない。
「広哉の気持ち……本当?」
「本当だ、どうしても勝ちたい」
「なら、広哉の強さを示して」
「僕はこのゲームが得意だ、だけど自分が相手だと勝つことができない」
「思い出して。あなたはどうやってこのゲームをやっていたかを」
「そう……僕は」
思い出した、ゲームをやっていた昔は僕が何も考えていなかった。
何も考えずに、ただ前を向いていた。
知らないことで、自然と楽しさがあった。
興味があった、ゲームに挑む好奇心があった。
「これはロジックなんかじゃない。
倒し方はない、だけど倒す方法があるのならば……」
「うん、毬菜」
僕は毬菜に声をかけた。
「僕に力を貸してほしい」
「分かったよ、絆パワーだね」
「ああ、それでいい」
僕の言葉に毬菜がようやく笑顔を見せた。
それは初めて出会った時の、あの何も考えていない無邪気な笑顔。
久しく見せなかった笑顔を毬菜はゲーム越しに見せてくれた。
「じゃあ行こうか」
「うん」
毬菜は僕に同意してくれた。
だからこそ、僕は進むことができた。
地面が揺れる中、僕は九戦目を迎えた。