121
地面が揺れる中のゲームは、とても不安定だ。
足場の不安定な山頂は、グラグラと揺れては恐怖があった。
山から落ちたら、無事では済まなそうな岩場が足元に広がる。
震える足を落ち着かせながら、僕はそれでもゲームを見ていた。
僕はあの後も負け続けた。
毬菜は何度も僕の前で倒れた。
イーエルファンクーは得意だったはずなのに。
「オシリス、強すぎ」
ゲームの中では僕の攻撃は全く当たらない。
オシリスは必ず攻撃を当ててくる、劣勢が覆らない。
「何が足りないんだ?どういう原理で動いている?」
断末魔の叫びをあげた毬菜を見ながら、七連敗の原因を探る。
しかし、ゲーム内のオシリスは首を横に振っていた。
「やれやれ……これでは勝てません」
オシリスの余裕は全く変らない。
僕は一撃も与えられずに焦っていた。魔田村で増やした残機も後三機。
「広哉……」
ゲーム開始を待つ毬菜が落ち込んだ僕に声をかけた。
「やっぱり勝てない」
「そんなことは……ない」
「じゃあ、どうすればいい?僕の攻撃は全て読まれている」
「広哉ってやっぱり弱いんだ」
「なんだよ、毬菜まで」
「広哉は弱いから勝てないんだよ」
「うるさい!」
僕はゲームの中の毬菜に叫んだ。
「僕は弱くない、強い」
「そんなのウソに決まっている、だって全然勝てないもの。
勝てるわけないよね、だって勝とうとさえしないから」
「それは違う」
「違わない。じゃあ攻撃が当たらないじゃない」
「オシリスがチート使っているからだ。
オシリスが不正に操作しているからだ」
「それは違うよ。広哉」
毬菜の言葉に一瞬呰見の顔が重なった。
「呰見?」
「昔の広哉はちゃんとできたもの」
イヤホンから聞こえた毬菜の声が、一瞬呰見と重なった。
「なんでそんなことを……いうんだ?」
「力があるから、広哉には」
毬菜の言葉に、僕の心はまだ固まっていない。
「そろそろゲームを始めよう、このゲームはネットで全世界に配信されている」
オシリスが一方的に再開していた。
僕はやはりうつむきながらコントローラーを握っていた。