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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
十二話:僕たちのレトロゲームは世界を救うことだってある
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僕の息巻く威勢は、空しく終わった。

あっという間に三連敗、毬菜は七機だ。

立ち上がったボロボロのチャイナドレスの毬菜は、息を切らしていた。

でも目は死んでいない。しっかり相手のオシリスを見ていた。


「……でも大丈夫です」

「やばい、強すぎる」

二つの武器があってはどうしようもない。

近づくことは、できない僕は手裏剣と鎖鎌になす術がない。


「なんて卑怯なんだ」

「卑怯ではない、モデルチェンジだ」

オシリスのゲームだ、勝てないことはない。

だけど僕は半ばあきらめていた。


「あたしの攻撃が届きません」

「いや……むしろ」

完璧すぎる、対応が。

近づこうとすると必ずカウンターが来る。まるでオシリスは全て僕の動きを理解しているかのようだ。


「ゲームとして倒せない相手は、成り立たないんじゃないか?」

「それは違うぞ、男子高校生。倒す方法はある」

オシリスが自信たっぷりに答えてきた。


「ではどうやって?」

「それを探すのがゲームだ」

「くそっ、分からないだろ」

「そう、人生にはヒントも答えもない」

かっこつけて言ってくるオシリス。

僕はコントローラーを持ったままゲーム画面を見ていた。


「でもどうすることもできない。これは勝てない」

「広哉……どうして諦めるの?」

「諦めては……いない」

だけど僕は全てを理解していた。


「攻撃が、全て読まれている」

「それでも広哉は何かスキを見つけて進んでいたじゃないですか?」

「無理だよ、今回は」

僕はいろんな手を使った。

だけどこれだけ完璧な防御と、近づけない敵は初めてだ。

普通の格闘ゲームでも、こんな強い相手はない。

いや完璧で無駄な動きをする相手はいない。


「広哉……相手をよく見ていますか?」

「相手?当り前だ」

僕はじっとオシリスを見ていた。


「だったらあたし……うまく説明できないけど」

「う~ん、分からない」

僕は投げ出したくなった。

全てパーフェクト負け、八回ダメージを受けるまでに八回与えないといけないのに。

攻撃を一度も与えていない相手に。


「無理だよ」

「そう、今の君には無理だ。だからそうやって諦める」

「ああ、僕はやる気がないんだ」

それは脱力感に似た自分の今の姿、いや少し前の姿。

どうすることもできない、完璧な強さ。

何ものにも代えることができない、圧倒的な強さ。


「どうやったら勝てる?」

「永遠にお前は勝てない、私は君の全てを知っている」

そう言いながら、オシリスは不敵な笑みを浮かべた。


「何を知っている?」

「全て……君が生きてきた全てを」

オシリスがとうとうマスクを取った。

それはまるで僕にそっくりな顔が出てきた。



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