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毬菜の敗戦に、僕は不満を隠せなかった。
毬菜が倒されて、オシリスが演武を見せる。
中国拳法の道場をモチーフにしたエリアには中央に銅鑼がある。
その真下で無残に倒されたのが、毬菜。
「クソッ、なんか卑怯に強いんだけど」
「そうだな、強い。オシリスだからな」
「こんなに強くていいのか?」
「いいや、それは弱くなったからだ。男子高校生」
オシリスの言葉に、僕は不満を覚えた。
「僕が弱くなったはずはない」
「このゲームは三十年近く前に発売された、やらなければ強くならない」
「それはわかるが、毬菜の動きが……」
「人のせいにするな!」
オシリスはなぜか怒ってきた。
ゲーム内の毬菜は、立ち上がって僕に笑顔を見せてきた。
「ちょっと不安ですが、あたしはまだできます」
「ああ、ここで引くわけにはいかない」
僕はゲームに戻る。毬菜は何事もなかったかのように立ち上がった。
だけど気になっていた。
僕の持っているコントローラーの受付時間に、微妙なずれがあることを。
「さて、このゲームは君が思うほどに最新鋭のゲームであることをご存知かな?」
「プロジェクションマッピングだろ」
「それが、それだけではない。投影機はどこにある?」
「そう言えば……疑問だ」
「そう、このゲームはここから送っていない」
「どういうことだ?」
「毬菜と同じ秘密だよ、それ以上に……呰見かな」
オシリスはもてあそんでいる。完全におちょくっているようにさえ見えた。
「さて、問題です。どうしたら私に勝てるでしょうか?」
「そんなの……決まっている」
僕はコントローラーを向けた。
険しい顔で、プロジェクションマッピングの画像を見ていた。
「絶対見つけてやる、行動パターンを」
僕はゲーム内のオシリスに再び挑んでいた。