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毬菜の記憶が戻る、それは喜ばしいことだ。
彼女はあまりにも知らないことが多すぎた。
だけどゲームを一つ一つクリアすることで知ったことがある。
それが彼女の中で、いろんなことが変わっていった。
だけど、知らないと前に進めないことを僕は知っていた。
「毬菜は何を知ったんだ?」
「あたしはいろいろ知った、まだ不完全じゃないけど」
「教楽来とは話したか?」
「お姉ちゃんにはいろいろ嘘をついていた」
申し訳なさそうな顔で、毬菜がため息をついた。
「それは仕方ない、君がつきたかった嘘ではない」
「だけどあたしにとって、それは辛いこと」
「毬菜は僕とゲームをしていて楽しいか?」
「うん、楽しい。広哉の指づかいを感じるの」
なんでそこは恥らいながら言うんだ。
顔を赤くして言う毬菜は、やっぱりちょっとエロく聞こえるぞ。
「ねえ、またあたしのおっぱい触ってみる?」
「ええっ……それは」
「ちょっと成長したんだよ」
「いいのか?」
「広哉なら……いい」
毬菜は笑顔になった。そのまま僕の右手を掴んでくる。
毬菜はやっぱりかなり積極的なのかも知れない。
それは僕に対してだけなのか、それは分からない。
「分かった」
「じゃあ、優しく……そうそう」
手を伸ばして、毬菜の胸が迫ってきた。
僕はやっぱり緊張するし、顔が赤い。
「優しくしてね」
「……毬菜」
そう言いながら、毬菜の持っているスマホが着信していた。
振るえるスマホを見て、緊張が一瞬途切れた。
「スマホ……」
「うん」
毬菜が僕の手を離して、スマホを見ていた。
それから間もなくして、毬菜が真剣な顔に変わった。
「最後の戦い、場所が決まりました。場所は雲産山キャンプ場」
「……マジ」
僕は一瞬にして驚いてしまった。
それは僕がよく覚えていた場所だった。