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僕は家で毬菜が帰っていないのを確認して、中学に向かう。
うかつだった。まさか、毬菜が頭痛でこれほど悩んでいるとは思わなかった。
教楽来とオシリスの話はしなかったのもある。
むしろ、毬菜は知っていたのかもしれない。
いろいろ考えて、僕は八神中の近くの公園に来ていた。
時間は既に夜をまわっていた。
そして雅がそこにはいた。制服姿の雅だ、学校からそのまま探していたのだろう。
通常のゴスロリ格好の雅も、制服姿だと少し新鮮だ。
「やはり毬菜は帰っていないのか?」
「ああ、帰っていない。こんなことになるとは」
僕は苦い顔を見せていた。やっぱり学校に行かせるべきじゃなかった。
毬菜の異変に気づけなかったことを僕は悔いた。
だけどその顔を見せると、雅が心配そうな顔を見せた。
「保健室に昼間、頭痛がひどくて休んでいた。
だが、夕方眠っていた毬菜が突然姿をくらましたのだ」
「何かあったのか?」
「なにかいろいろ言っていたようじゃ。
自分に自信がないとか、怖いとか、全てを知ってしまったとか」
雅の言葉に、毬菜の様子がおかしいのは知っていた。
「そうか……」
「アテはあるのか?」
「たぶん」
僕は一つだけアテがあった。それを見た雅はじっと僕に手を当てた。
「ならそれはきっとルイの仕事じゃ」
「なんで僕の仕事なんだ?」
「相棒だろう」
雅の言葉に、僕はただ頷くしかなかった。
「そうだったな。雅……すまない」
「いや、いいのじゃ。わらわは決まっておる。
ルイと毬菜を見ていて、いろいろと感じたのだ」
「絆か?」
「絆だけではない、特別な関係を感じるのじゃ」
「なんだよ、それは?」
「さあな、それを詳しく説明はできない。だがルイは、追いかけなくていいのか?」
そう言いながら雅が持っていた、たたまれた傘先を僕にさしてきた。
「本当にこの埋め合わせは……」
「わらわにかまうな。すぐに行くのじゃ!」
雅の言葉に、僕は背中を押されて走り始めた。
僕はもう振りかえなかった。ただあの場所に向かって走り出した。
それは全てが始まったあの場所。