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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
十一話:僕たちのレトロゲームは全ての記憶を蘇らせることもある
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僕が来ていたのは加布羅兄さんの部屋。

何よりつけていたのはイーエルファンクーというゲーム。

狭い加布羅兄の部屋に、僕は久しぶりにゲームをしていた。


狭い部屋に、こたつの部屋。

タンスに本棚が乱雑に置かれた四畳半の部屋。

そこにあるのは小さなテレビ。昔みたいに、僕と加布羅兄はゲームをしていた。

オシリスが出てきて二時間後、時間はすっかり夕方だ。そこで尋ねに行ったのだ。


「まさかイーエルファンクーが最後のゲームだとはな」

「僕はこのゲーム持っていないんですよ」

「そうだな、このゲームはかなりレアだしな」

加布羅兄がやっているイーエルファンクーは格闘ゲームだ。

ファ○コン最初の格闘ゲームとも言われる、伝説のゲームだ。

一対一で戦い、単純に相手のスタミナをゼロにすれば勝ち。


舞台は中国で、悪行三昧の一味を倒すべく塔に向かう主人公の話。

そんなストーリーだったが、敵は五種類しかいないわけで。


「今回も三面制?」

「さあ、わからない。でも競う相手はいないし」

「百人組手だったり」

「勘弁してくれ。アレはかなりきつかったよ」

前に百人組手をやったことがあるが、永遠とただ百人を倒すもの。

ただし敵の種類は五種類しかいないから、周回するとスピードが上がったりする。

基本的には中国拳法で戦うが、手裏剣が出てきたりするし。


「苦手なの、女か?」

「いや、最後の五人目。急に飛んでくるヤツ」

「ああ、あのデブ。分かる。急に飛んでくるしな」


言っているのは、イーエルファンクーの敵の話だ。

女は手裏剣使い、四面の敵。

デブは、飛び込んでくる五面の敵。

いかにも中国人風な敵が五人出てくる。


「加布羅兄は何週目まで言ったんですか?百人組手言ったから百人は……」

「百人でやめたよ、疲れるし。子供のころの集中力だから」

「まあ、そうだね」

「このゲーム、ジャンプキックハメあるよね」

「ああ……ある」

加布羅兄さんがやっているゲームの男主人公が、ジャンプして下降しながらジャンプキック。

敵の棒使いは攻撃するが空振り。


「そうか、下降するときにジャンプキックを当てると攻撃ができないんだ」

「このハメがあれば、いくらでも勝てる」

「だけど……オシリスゲームは?」

「きっとそれだけではないと思う」

加布羅兄さんは難しい顔を見せていた。

そのまま加布羅兄さんがわざと負けて、次は僕の出番になった。

二人用の格闘ゲームだけど、交互にプレイをするシステムなのだ。


「でも前回の魔田村はバグ技が使えたし」

「このゲーム、本当に面白いゲームだよな」

「ああ……うん」

「格闘ゲームなのに、対戦ができないんだぜ」

「そうだね」

加布羅は煙草を吹かせながら、じっと僕のゲームを見ていた。


「二人用ができるのに、このゲームはすごいよ。ある意味斬新だ。

ならば、オシリスはきっと最後にとんでもないしかけをする」

「すごい自信ですね」

「このゲームが普通のゲームじゃないからね」

加布羅兄さんの言葉に、僕は思い当たる節があった。


「加布羅兄さんは、どう思うんだ?」

「単純な話、最先端の未来のゲームだと思う」

「えと……どういうこと?」

「プロジェクションマッピングという最先端のモノで、建物の壁を使いレトロゲームをする。

これのどこが普通なゲームなんだ?すごいゲームじゃないのか?」

「あっ……」

「そう言う意味で広哉はいい経験をする。俺もやりたかったぜ」

加布羅兄さんの言葉に、勝った僕は誇らしくもあった。


「それは違う、僕は偶然だ」

「そんなことない、レトロゲームに偶然はない。

技術と知識と運、それは全て本人の力なんだ」

加布羅兄さんの言葉はどこか温かだった。


「それでも、僕の勝ちで香春さんは……」

「ああ、全くだ」

そう言いながら、加布羅兄さんは不機嫌そうに本棚をあさり始めた。

そんな加布羅兄さんは一冊のノートを僕に見せてきた。



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