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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
一話:僕たちのレトロゲームはスタートボタンで始まることもある
11/129

011

博多駅、それは九州一の大きな駅だ。

しかし本州からつながる新幹線は、この駅を出発することはなく三か月以上たった今でも残っていた。

時間はいつの間にか夕暮れから、日が沈もうとしていた。

大きな博多駅にくるのは久しぶりだな、学校の行事以来だ。


そんな福岡のほぼ中心なる博多駅に、毬菜と一緒にくるとは思わなかった。

博多駅は当然のことながら、人が多く賑わっていた。

そして、駅の広場にあるベンチに座って待っていたのは教楽来姉だ。

相変わらずのブレザーと肩がけのカバンを持って、僕達を待ち伏せていたかのようだ。


「ようやく終わったようね、儀式」

「儀式ってお前……」

「毬菜のおっぱいはどうだった?

意外と小さくなかったでしょ、それとも今度は私がいい?」

などと僕の目の前で、優等生キャラとは思えないほどの巨乳をちらつかせた教楽来姉。

ブレザー越しだが、やはり大きい。垂れていないのがまたいい。って僕は見てしまったじゃないか。

迫りくる教楽来姉に、僕は無理矢理両手で押し切った。


「なっ、何を言う!」

「巨乳のくせに垂れ乳じゃないから、あたしの方がいいって思わなかった?」

「うっ、なんでわかる?」

「無論よ、毬菜のおっぱいをモミモミしまくった童貞な幸神君」

そう言いながらもやはり感情を表に出さない、言葉にも抑揚はない。

怒っている様子も、照れている様子もない。

やはり、教楽来姉はロボットみたいに変わっていた。


「そこまで……しない。僕はこれでも紳士だ」

「不良の紳士ね、理不尽な存在よ」

「お前もこのゲームの参加者てことは誰かにその……」

「あら、やはりエロいことを想像しているのね、さすがは童神君」

「勝手に変な名前を付けるな」

「あら、その方が随分言いやすいじゃない」

「そう言う問題じゃない、お前はあるのかよ?」

「私は恋愛ほど理不尽なものはないと思っているわ。

そうねえ、私のことは処女であって、まっさらな処女なのよ。

純粋巨乳な処女で、あなたの望みどおりよ、よかったわね」

「なんか僕をからかっているだろ」

「あら、分かる。だけど私は自分が持つ遺伝子の種の保存は反対しないわ。

生物が子孫を残すことには否定しない、理にかなっているもの」

教楽来姉はなぜか胸を張って僕の前に腕を組んでいた。

それを隣の毬菜が、「おおっ、お姉ちゃんさすが」といいながら拍手していた。

なんなんだ、この姉妹は。変だ、謎が多すぎる。


「何しに来た、妹を返してもらいに来たのか?」

「いいえ、あなたに話しておかないといけないからね。

一年の時は、全部で十回しか学校に来なかった幸神君」

「うるさい、いいだろ」

「何がいいのよ?退学にならなければいいものじゃないわ」

「ちゃんと成績は出している、文句ないだろ」

「わざと低い偏差値の学校に来て、成績出しているからいい。

それがあなたの考えね、しっかりと修学旅行にも参加して」

「参加はしたくなかった。

いや無理矢理参加させたんだろ、僕のことをあまりよく思っている人間もいないからな」

「そうでしょうね」

はっきり言いかえした教楽来姉。


「あれは担任が悪いんだ、修学旅行だけ参加しろって担任に言われた」

「言われても来なければいいじゃない、あなたなら分かるでしょ」

「ああ……なんとなくだ」

「結局修学旅行に来て、あなたはクラスから完全に孤立した」

「担任にはめられたんだ、クソッ。今思い出してもムカツク、そうだよな委員長」

「そうね、でもサボっていい事にはならないわ」

「いいや、なるさ。ただでさえ僕はこの世界が、クソつまらない面倒な世界だと思っていたんだ。

やはり現実はクソだ、何も楽しくない。今も、これから未来も」

「ではあなたの過去は楽しかったっていうの?」

教楽来姉の言葉に、僕は眉をひそめた。


「僕は(ファラオ)になって過去を変える。そう決めた」

「そう……いい心がけだわ。随分と変化したのね」

「なんとでも言え、僕なりに叶えたい願いがある」

「それでいいわ、本気のあなたを倒さないとつまらないもの」

「それで本気でレトロゲームをするのか?」

「そのようね、ゲームが動くのはこれからだから私も分からないの。

ただ……一つ言えることは、このゲームはサバイバルだということ」

「サバイバル?」

「そう、毎回一つのレトロゲームが出てきて、それをただクリアする。

だけどこのゲームには八人、いや八組のプレイヤーがいる」

「つまりは脱落するというサバイバル……」

「そうね、そうなるわね。

コントローラー契約をすると、すぐに送られてくるメールに行うゲームとルールが書いてあるわ」

「それは初耳だな、ありがとよ」

「ええ、気にすることはないわ」

教楽来姉はそれほど気にする様子はない。

むしろ、落ち着いていて怖いぐらいだ。


「もしかして情報を与えるためにわざわざいたのか?」

「そうね、それだけ。毬菜にいかがわしいことをしているか監査していたのよ。

ちゃんといかがわしいことを、していてよかったわ」

「だったら僕に預けないで……」

「預かるって決めたのはあなたでしょ、いいじゃない。

毬菜もあなたになついているようだし、私としては嫌いな言葉だけどそれはきっと運命よ」

教楽来姉の言葉に、毬菜は複雑な顔を見せた。

むしろ教楽来姉は、毬菜を避けているようにさえ思えた。


「私もそろそろ行くわ、また会いましょう。幸神君、あなたはこれから私の敵だから。

二十時から、楽しい余興が始まるわよ……オシリスゲーム。まあ、私もやるのは初めてだけど」

教楽来姉はそう言いながら、悠然と去っていった。

それを最後まで毬菜は不安そうに見ていた。



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