109
それは何の前触れもなく現れた。
突然何の変哲もない壁が、変わっていくのが見えた。
今日は曇っていたのもあってか、映像がよく見えた。
どうして今、この映像が出て来るのかわからない。
だけど、何気ない塀が急に変わった。
それは完璧に僕に対する映像だ。
「理不尽よ」
隣にいた教楽来が不満そうにつぶやいた。
「いや、理不尽ではない」
そして出てきたのは、バタフライマスクの男、オシリスだ。
僕は塀に現れたオシリスをじっと見ていた。
「何のつもりだ?」
「私は最後のゲームの案内をしに来たのですよ。
七つのステージをクリアした男子高校生よ」
「相変わらず突飛な登場の仕方をする」
「こうしないと、あなたとは繋がれないから」
やっぱりオシリスは不思議だ。
教楽来もまた、僕の隣でいきなり現れたオシリスを見ていた。
「最後のゲームはイーエルファンクーです」
「イーエルファンクー、あれか」
僕はやっぱりそのゲームも知っていた。知っていたゲームだからオシリスを見ていた。
「やはり、全て僕が知っているゲームだ」
「なぜ七つすべてのゲームが、僕の知っているゲームなんだ?偶然にしてはおかしい」
僕はずっと疑問だった。
全てのゲームを僕は知っているわけではない。
だけど、全てのゲームは僕が知っていた。
「やっと勝ち上がって来たね、『|HIGH SCHOOL・M《男子高校生》』。
これは全て君のためのゲームだからだよ、幸神 広哉」
オシリスの言葉は、完全に僕に向けられていた。