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僕が見たそのリュックサックは、初めてではない。
ボロボロになったピンクのリュックサック。
そのリュックサックは、見覚えがあったからだ。
「なんでこれが?」
「ああ、届いたんだ。一週間ほど前かな、三種の神器とか言われて」
「マジかよ」
「やっぱり広哉が知っているモノなのか」
「三種の神器なんかじゃない、こんなものは……」
「じゃあ、なんだ?」
「それは呰見の形見だ」
僕の言葉に、加布羅兄さんがピンクのリュックサックを見ていた。
「呰見って、あの昔の彼女か?」
「うん、でもなんでこれが?送られた箱とかは……」
「そこのダンボールに入っていた。そうそう」
そう言いながら、加布羅兄さんは部屋の押し入れに頭を突っ込んでいた。
間もなくして出てきたのが、手紙だ。
「これは?」
「手紙がここに添えてあった」
その手紙をじっくりと僕は見ていた。
その手紙の内容は、簡単だった。単純にリュックサックのことだ。
これが三種の神器である証明だとわかった。
だけど、それ以上に気になったことがあった。
「広哉、このゲームの正体が分かったか」
「何となくだが、いろいろと謎だったんだ。でも一つだけ分かった」
「そうか……何か協力できるか?」
「いや、その前にちゃんと話さないといけないやつがいるんだ」
そう言いながら、僕はボロボロのピンクのリュックサックを見ていた。
リュックサックを手に、僕は頭を深く下げた。
「僕はこのゲームに必ず勝つから」
「ああ」加布羅兄さんは最後まで笑顔だった。