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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
十話:僕たちのレトロゲームは知識の塔に満ちている
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あのゲームが終わって二日が過ぎた。そんな僕は、呼ばれていた人がいた。

ここはいつも通り楽しい場所だ。

楽しいけど、僕はどこか辛い場所だ。

手狭な部屋に、レトロなゲームとソフト。


「やっと来てくれたか、広哉」

出迎えたのが、私服の加布羅兄さんだ。夏のような明るいシャツとズボンで。

ちなみにエアコンはなく、扇風機が稼働していた。


「なんで呼んだんですか?」

「広哉はやっぱり勝ったか」

「……うん」

僕はそれでも浮かない顔を見せていた。

こたつがあり、狭い部屋にはファ○コンの初期があった。

レアなゲームソフトがあって、僕が持っていないゲームまである。


「広哉に負けたってことは……やっぱ時代だな」

「違うよ……あのゲームの順位が全ておかしいんだ」

僕の言葉に、加布羅兄さんはすがすがしい笑みを浮かべていた。

釈然としない顔の僕と加布羅兄さん、こうしてみるとどっちが勝者か分からない。


「そうではない、レトロゲームは技量の差が出るからな。

ソノサンのガキは広哉が好きなゲームだ、俺が勝てなくても仕方ない。

香春も協力してくれたんだけどね、技術不足さ」

「そうじゃないよ、加布羅兄さんだってわかっていた。

あのゲームはスコアを競っていないことを」

確かに僕は唯一加布羅兄に勝てるゲームだろう。

加布羅兄はパズルゲームがどうしても苦手だから。


「そう、ゲーム偏差値。どこで気づいたんだい」

「結果画面、僕は二回目のゲームでスコアが高かった。

だけど、加布羅兄さんに勝てなかった。あの結果画面には最終ステージが出ていた。

ステージの割には、加布羅兄さんが上。つまりほかの要因が関わっていた」

「なるほどね、それ考えたんだ」

「ただのスコア勝負じゃない、これはオシリスゲームだ」

僕の言葉に、加布羅兄はなぜか笑っていた。


「はっはっは、やっぱりそうか。香春も何となく気づいていたんだよね。

そういうところ、広哉は強いな」

「怒らないんですか?」

「ああ、それもゲームだ。このゲームは不明瞭な点が多い」

加布羅兄さんはどこかでも寛大だ、僕なんかと違う大人なんだ。

だけどその結果で同じ大学生の香春はいなくなった事実もある。


「そういえば毬菜は?」

「毬菜は……自宅にいます。ショックだったみたいで」

「そうか……」

加布羅兄さんはしんみりした顔になった。


「そうだ、広哉。これを俺は渡されたのだけど……」

そう言いながら加布羅兄は押入れの方に入っていく。

押入れから何かを探していた。


「渡された?」

「ああ、突然ここに送られてきたんだ。これなんだけど」

そう言いながら出てきたのは、ピンク色のリュックサック。

だけどボロボロになったそれは、僕は目を大きくした。



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