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あのゲームが終わって二日が過ぎた。そんな僕は、呼ばれていた人がいた。
ここはいつも通り楽しい場所だ。
楽しいけど、僕はどこか辛い場所だ。
手狭な部屋に、レトロなゲームとソフト。
「やっと来てくれたか、広哉」
出迎えたのが、私服の加布羅兄さんだ。夏のような明るいシャツとズボンで。
ちなみにエアコンはなく、扇風機が稼働していた。
「なんで呼んだんですか?」
「広哉はやっぱり勝ったか」
「……うん」
僕はそれでも浮かない顔を見せていた。
こたつがあり、狭い部屋にはファ○コンの初期があった。
レアなゲームソフトがあって、僕が持っていないゲームまである。
「広哉に負けたってことは……やっぱ時代だな」
「違うよ……あのゲームの順位が全ておかしいんだ」
僕の言葉に、加布羅兄さんはすがすがしい笑みを浮かべていた。
釈然としない顔の僕と加布羅兄さん、こうしてみるとどっちが勝者か分からない。
「そうではない、レトロゲームは技量の差が出るからな。
ソノサンのガキは広哉が好きなゲームだ、俺が勝てなくても仕方ない。
香春も協力してくれたんだけどね、技術不足さ」
「そうじゃないよ、加布羅兄さんだってわかっていた。
あのゲームはスコアを競っていないことを」
確かに僕は唯一加布羅兄に勝てるゲームだろう。
加布羅兄はパズルゲームがどうしても苦手だから。
「そう、ゲーム偏差値。どこで気づいたんだい」
「結果画面、僕は二回目のゲームでスコアが高かった。
だけど、加布羅兄さんに勝てなかった。あの結果画面には最終ステージが出ていた。
ステージの割には、加布羅兄さんが上。つまりほかの要因が関わっていた」
「なるほどね、それ考えたんだ」
「ただのスコア勝負じゃない、これはオシリスゲームだ」
僕の言葉に、加布羅兄はなぜか笑っていた。
「はっはっは、やっぱりそうか。香春も何となく気づいていたんだよね。
そういうところ、広哉は強いな」
「怒らないんですか?」
「ああ、それもゲームだ。このゲームは不明瞭な点が多い」
加布羅兄さんはどこかでも寛大だ、僕なんかと違う大人なんだ。
だけどその結果で同じ大学生の香春はいなくなった事実もある。
「そういえば毬菜は?」
「毬菜は……自宅にいます。ショックだったみたいで」
「そうか……」
加布羅兄さんはしんみりした顔になった。
「そうだ、広哉。これを俺は渡されたのだけど……」
そう言いながら加布羅兄は押入れの方に入っていく。
押入れから何かを探していた。
「渡された?」
「ああ、突然ここに送られてきたんだ。これなんだけど」
そう言いながら出てきたのは、ピンク色のリュックサック。
だけどボロボロになったそれは、僕は目を大きくした。