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僕たちのレトロゲームが世界を救うこともある  作者: 葉月 優奈
十話:僕たちのレトロゲームは知識の塔に満ちている
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僕の部屋には僕と、二人の女だ。

一人はいつも住んでいる毬菜、今となっては僕の家の唯一の同居人だ。

ゲームをしている相棒でもある女、毬菜だ。

そしてもう一人は、毬菜を捨てた女だ。


「大体、教楽来がなぜここに?」

「あら、あなたの情報は全部つかんでいるわよ」

水色のワンピースは教楽来の私服だ。

清楚な感じがするが、目はいつも通りよどんでいた。よどんだ目が、私服を渋らせているようにも見えた。

落ち着いたたたずまいで、僕のことをずっと見ていた。


「それは貴方のピンチに駆け付けたのよ、幸神君」

「なぜわかる?」

「ネットで出ているわよ」

教楽来の言葉に、スマホを少しだけ確認した。

確かに最近、ネットではオシリスゲームが話題になっている。

報道も過激になっているが、面倒な話だ。


プロジェクションマッピングに映し出されるレトロゲームは、どこか懐かしさもあいまった。

ネットでは、そこにオシリスゲームの仮説を立ててプレイヤーの割り出しも始まっていた。

僕の名前は幸いにも出ていないようだが。


「そうかい、無様だろ」

「無様ね」

「僕を助けるってどうやって?ゲームをするのは僕と毬菜だけだ。

相手は加布羅兄さんだけだ」

「ではあなたをゲームに導いたのは誰かしら?」

教楽来は得意げに笑っていた。

いつもそうだ、教楽来は間違ったことを言わない。

正しい、正しすぎて何も言い返せない。

それを逃げるかのように、僕はゲーム画面を見いていた。

もちろんソノサンのガキを続けていた。


「僕はどうすればいい」

「簡単じゃない、勝つのよ」

「その勝ち方が全然分からない。僕は香春にプライドを傷つけられたから」

ショックだった、香春は圧倒的な強さと知識を見せつけられた。

唯一レトロゲームで、このゲームだけなら勝てると思ったのに。

そこで負けたことは、僕に勝機はもう残っていない。

だから迷っていた。そんな僕を、ずっとよどんだ目で見ていたのが教楽来だ。


「僕にはもう勝てない……」

「このゲームはレトロゲームじゃないわ、オシリスゲームよ」

「そうだ、だから僕はこのゲームを……」

「オシリスゲームは実に多岐にわたった勝利条件があるわ」

「どういうことだ?」

教楽来の言葉に、僕は耳を傾けた。


「勝利条件は、スコアでしょ」

「ああ、スコアだよな」

僕が毬菜にうながして、毬菜は頷いた。


「でもこのゲームには、スコアが一つじゃないでしょ」

「どういうこと……まさか?」

「あなたなら、考えそうでしょ」

教楽来の言葉に、僕ははっとした。


「そうか、そういう事か」

僕は疑問だった毬菜のメールが分かった。

それはただのスコアじゃない。ならば、僕はたった一つの可能性に賭けるしかなかった。



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