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喧嘩した翌日、僕はアパートの前で愕然としていた。
手を震わせて、壁の前でおののいていた。
オシリスゲーム7-2が終わった。
僕たちは加布羅兄さんに負けた。しかも大差をつけられた。
「くそっ、そんな」
悔しむ僕の隣に、毬菜が戻っていた。
さっきまでコントローラーとして制御していた毬菜は、いつも通りのセーラー服を着ていた。
「広哉」
「なんで勝てないんだ」
「……大丈夫」
「何が大丈夫なんだよ」
僕は振り返って吠えた。それでも後ろの毬菜は無邪気に笑っていた。
「大丈夫だよ、広哉」
「ソノサンのガキを得意とする香春と、レトロゲームの腕前が完璧の加布羅兄さん。
こんなのが組んだら叶うわけがない」
「マイク機能」
「そうとも、二人は足りないものを補完しあっていたんだよ」
僕の言葉に、毬菜は考える仕草を見せた。
「補完?」
「香春はソノサンのガキの知識が誰よりもある。
それは僕が知ったことだ、彼女はとても強い」
「香春さんはレトロゲームがやはり好きですからね」
毬菜も香春を知っていた。だからこそ香春に全く勝てなかったことが、悔しかった。
しかもそれは、一番僕が得意にしていたソノサンのガキ
「確かに香春の知識は優れている。
マイク機能があれば、加布羅兄さんのテクニックにかなわない」
「だからです」
そこに出てきたのが毬菜だ。だけど毬菜のいう事は想像できた。
「毬菜、絆とか言うんじゃないんだろうな」
「そうですよ、広哉は何もわかっていない。
これはただのレトロゲームじゃないんです、オシリスゲームですから」
「それはそうだけど……」
「だとしたら、あたしたちのやることは一つでしょ」
「お前はそうやっていつも不確定な力ばかりに頼る」
「不確定じゃない、加布羅さんも香春さんもそうやって戦っている」
毬菜の言葉に僕は戸惑った。
「そうね、ここは毬菜の言うとおりだわ」
そして、なぜかそこにもう一人人物が現れた。
それは僕がよく知っている人物だった。