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悪い夢の時間  作者: ネガティブ
星夜に走る夜汽車
55/72

じゅう

 夜汽車がまた揺れた。右に左に何回も揺れる。何かあったのかなと思い気になる。

 ドアが開いたり閉じたりしている。これはこの揺れによるものなのだろうか。

 揺れるたびに本が床に落ちる。椅子も右にいったり左にいったりしているから当たると危ないだろう。この車両にいること自体が危ないかもしれない。大きな揺れがきて、本がいっせいに僕のほうへと向かってきたらただではすまない。とりあえずこの車両から出よう。隣の車両に移ろう。

 僕は足元に注意しながら開いたり閉じたりしているドアを目指す。後ろから何か叫び声みたいなものが聞こえたような気がするけど、今は振り向いて確認する余裕はない。バタンバタンと本が次々落ちているから。

 開いているドアを足で止めて、そして貫通幌を通り抜けて隣の車両へと移る。ここもドアが開いたり閉じたりしている。

 依頼主の隣の車両は、等間隔に並んだ座り心地が良さそうな皮張りの椅子に、木の天井の中に幾つも丸があってそこからライトが光っている。ここは客車だ、しかし椅子には誰一人として座っていない。

 また揺れた。右に左に激しく揺れる。僕はそのへんの椅子に腰を掛けて適当なところを掴んで投げ飛ばされないようにする。

 夜汽車に何か起こっているが、窓の外に広がる景色は変わらない。上も下もキラキラしていて宝石箱の中にいるみたいだ。

「オマエは……お前は……ボクを! 僕を裏切ったのか!」

 何か声が聞こえてきた。静かな車内だ、大きな声を出せばどこまでも響くだろう。

「親切なふりをシテイタノカ? ヤサシイふりをしていたのか? 愛はウソだったのか、僕とボクは騙されていたのか!」

 依頼主が何か叫んでいる。叫んでいる相手はお姉さんだ、お姉さんしかそこにいないから。何か依頼主の機嫌を損ねることでもしたのか。

「ユルサナイ、僕はお前を呪い続ける。許さない、ボクはオマエをコロシテヤル。僕の怒りに触れてしまった、ボクのココロをクロクヨゴシタ」

 依頼主はお姉さんにたいして怒っている。殺すと物騒なことも言っているから相当だ。

 僕が食堂車から追い出されてから何があった。あの時の二人はとても幸せそうだった、愛でいっぱいだった、それなのに何故こんなことになっているんだ。

 夜汽車は左に傾いていく。前のほうからぶつかり合う音が聞こえてくる。壁一面に並べられた沢山の本がぶつかり合っているんだろう。

 体が横になる。投げ飛ばされないようにしっかりと両手で椅子を掴む。窓から見える宝石箱も横になっている。

 傾きは止まらなくて、両手では体を支えきれなくなって手を放した。僕は天井へと着地して、逆さになった椅子を見上げた。

 何故夜汽車は逆さまになっているんだ?

「さあ、ここから出ましょう」

 その時声が急に聞こえた。ビックリした僕は体をびくっとさせた。声の主はお姉さんで、依頼主の姿はなく一人だった。

「この傾きはどういうことか教えてよ」

「この悪夢を終わらすためよ」

「お姉さんはここで依頼主と過ごすんじゃなかったの」

「さっきのあれは演技。ああでもしないと警戒を解かなかったから」

「どうしてそんなこと」

「私はもうこんな可愛い姿じゃないの。それどころか私は……もうこの世に……」

「なるほど」

 お姉さんは外の世界にはいない。でも依頼主の夢の中では可愛い姿でいられる。しかしそれをお姉さんは望んではいない。

 夜汽車が少しずつ垂直になっている。天井も安全ではなくなる。それなら傾いた椅子に座ったほうが安全だ。

 お姉さんはニコニコしている。こんな時でも笑っている。

「あの人はずっと私を忘れないでいてくれた。それはとても嬉しいことだけど、もうやめてほしいの。もうじゅうぶんなの、よく頑張ったの、だから早くこっちに来てほしいのよ」

「それを直接言えないの?」

「言えないわよ。言えたらどんなに楽かな、言えないから苦しいんじゃない。あっちで会えたら怒っているだろうな」

「物騒なことを言っていたしね」

「ふふふ、そうね。あの人には私しかいないから、だから唯一信じられる存在に裏切られたらショックは大きい。でもこうしないとあの人の中にいる悪魔を消せない」

「ヤツを消すってことはこの夢を終わらせるってこと。だから依頼主の望みを断ち切るってことになるよ」

「わかってるよ」

「それでいいの? 依頼主はあんなに怒っていたけど」

「いいよ……もう」

「そっか」

「もういい加減老いぼれは立ち去るべきよ。そしてさっさと私の所に来なさいよ」

「寂しかったんだね」

「……」

「だよね、寂しいよね」

「……」

「まあ僕としては悪い夢を消せるからいいんだけどさ」

「さあ、もうここは危ないよ。最後にひと花咲かせるからさ」

「それはどういうこと?」

 僕のその問いかけにはお姉さんは答えてくれなくて、手を掴まれて引っ張られて下へと一緒に落ちていく。

 夜汽車は星空を見上げている。汽笛を鳴らして見上げている。いったい何が始まるんだ。

 ドアにぶつかると思って僕は目を閉じた。すると衝撃はなく、思いきりぶつかって体が痛いとかもなく、ドアは先まで全部開いていた。まるで僕とお姉さんをキラキラとした宝石箱へと導くように。

 依頼主は今何を思っているのかな。お姉さんが裏切ったことを怒っていて、血管が切れてしまいそうなぐらい叫んでいるのかな。また物騒なことを口走っているのかな。

 呪うとか殺すとか、それはほんしんではないはずだ。依頼主はお姉さんのことが好きで好きですしょうがないんだ、本当は誰よりもお姉さんのことを愛してるいるんだ。だからこそ目の前で起きたことが信じられなくて、受け入れられなくて、だからさ――――。

 窓を見たら火が燃えているのが見えた。夜汽車は火で包まれてしまうのか、何もかも燃えてしまうのか、依頼主も燃えてしまうんじゃないのか。

 お姉さんを見ると涙を堪えているようだった。お姉さんだって悲しいんだ、愛する依頼主にこんなことをするのは。でもこうしないと依頼主のためにならない、そしてお姉さんのためにも。

 勢いよく落ちていく僕とお姉さん。客車やバーや寝室、色んな車両を通りすぎていく。この色んな車両は、依頼主がお姉さんと過ごすために作ったものだ。

 それらが全て燃えてしまう。何一つ残らずに燃えてしまう。それはとても悲しいことだ、とても辛いことだ。お姉さんは今何を思っているのかな。

 夜汽車は上へと上へと昇っている、僕とお姉さんは下へ下へと落ちている。僕の目にはこの夜汽車の出口が見えた。夜汽車から出たら星空へと放り出される。

 僕はパラシュートは身に付けていない。お姉さんは身に付けているのかな。もし二人とも無かったら勢いよく地面へと落ちていってしまう。

 そんなことを考えていたら出口を通りすぎた。僕とお姉さんは星空へと放り出された。僕はお姉さんから離れないように、手をしっかりと握った。

 パラシュート無しのスカイダイビングは怖いだけで楽しめない。そんなのやるやつはどうかしている、命を捨てにいくようなもんだ。僕とお姉さんはどうかしている、そんなに命を捨てたいのか?

「お姉さん! もう片方の手をこっちに!」

「えっ、何? 風の音が凄くてよく聞こえない!」

「手をこっちに! さあ!」

「手? こんなことしてどうするの?」

「バランスをとって! 僕の真似をして!」

「真似って……そんなの上手くできないよ!」

「いいからやって! そうすると安定するから!」

「うん……わかったわよ!」

 僕とお姉さんはくるくる回りながら落ちている。真上には夜汽車がある。窓も天井も車輪も、全部に火が燃えている。

 火は全てを燃やしてしまうけれど、美しいと思う時もある。今そう思ってはだめなんだけど、星空とのコラボレーションは美しい。

「ほんとだ! 安定した!」

「でしょ! もう怖くないでしょ!」

「でもパラシュートはどうするの! 私持ってないよ」

「そんなのどうにでもなるよ。でもさ今はしっかりと見ておかないと!」

「そうだよね……ひと花咲かせるんだもんね」

「その意味がやっとわかったよ。あの火はそういうことでしょ」

「ええそうよ!」

「酷いことをしているけどさ、美しいよね!」

「それ誉めてるの、誉めてないの! どっちだっていいけどね」

 夜汽車はさらに上に昇っていく。まるで皆に花を見せるかのように、美しい花を見てもらうために。依頼主は今この瞬間も叫んでいるのだろうか、それともお姉さんの思いが伝わって花となることを受け入れているのか。

 もうここからでは依頼主の声は聞こえない。お姉さんは夜汽車を見上げているが、その表情は晴れやかだ。さっき涙を堪えていた姿は見間違いかなと思えるぐらいに。

 これはお姉さんがやったことだ。後悔なんてものはない、だから悩むことも考えることももうないんだ。この夢が終わったらお姉さんは消える、外の世界にはもういないから。

 そして依頼主はこの夢から目を覚ましたら現実に戻る。そしてきっと、そう遠くない未来にお姉さんと再び出会うだろう。

 キラキラしている中に夜汽車が燃えている。これも何かのイルミネーションみたいで綺麗だ。宝石箱の中がより綺麗になる。

 燃えている夜汽車から一筋の光があちこちに飛んでいく。まるでビームみたいだ。その姿は夜汽車が最後の力を振り絞っているみたいだ。もうじゅうぶん頑張ったよ、だから最後にひと花咲かせよう、そして愛する人が待つ場所へ行こう。

 夜汽車が爆発した。椅子や本や天井や、色んな破片が宙に飛び散る。

 夜空に咲いた花は、きっと大勢の人が見たはずだ。一人の男の最後の瞬間を、空という大きなスケッチに描いた大きな花を、一瞬で花が咲いてそしてすぐに枯れるその光景を。

 終わった。この夢から悪は消え去った。依頼主はそのうち目を覚ますだろう、そこから先は僕は知らないことだ。

「綺麗な花だったね」

「ええそうね」

「もうあんな花は二度と見れないね」

「ええ」

「お姉さんのその笑顔素敵だね」

「これで良かったんだよね」

「それは自分の心に聞いてよ」

「聞かなくてもわかるよ」

「じゃあ何も考えなくてもいいよ」

「うん」

「大丈夫だよ、怒ってると思うけど話せばわかるよ」

「ありがとう」

「いえいえ、これぐらいしかできないから」

「やっと安心できる」

「いつまでも思われるのは重いね」

「そうだね。たまに思い出してくれるぐらいでいいのに」

「お盆とか、命日とか?」

「そうそう。それでいいよ。あとは綺麗に掃除してくれたらいいね」

「依頼主はもう掃除をしに来れないけど」

「私の側に来てくれるからいいのよ」

「そっか」

「……そろそろお別れだね」

「うん」

「外の世界に朝がやって来る」

「ここは夜なのにね、宝石みたいに綺麗な星が光輝いているのにね」

「ここは夢だからね。そんなこと知ってるでしょ少年なら」

「この綺麗な星空をもうちょっと見たいなって」

「そっか」

「そうだよ」

「じゃあ黙って見てようよ」

「この夢から追い出されるまで見てるよ」

「……うん」

 上と下がキラキラしている。自然なものと人工的なもの、その二つは正反対のものだけど別に敵対しているわけではない。仲良くすることはできる、それは不可能なことではない。

 ほら、上から下へと光の線が出ている。下からも上へと光の線が出ている。その光の線は少しずつ近づいている。

 そして宙で繋がった。光はより一層輝いたような気がする。自然と人工的、その二つが交われば何かが起きるんじゃないのかと思えてきた。

 それぐらい大きな心になれるのは何故だろう。とにかくもう少しだけ、この星空を楽しもう。星夜が終わるその時まで。


 ◇


 目を開けた少年は冷蔵庫に背を付けてもたれていた。

 眠そうな感じはしなくて、微睡んでいる様子も欠伸が出る気配もない。ただじっと前を見ている。

 首を横に動かして外を見る。空は暗くて、そこにはあちこちに光っているものがあった。

「星はもういいよ」

 少年は呟いた。

 しかし空から目を離さない。そうは言いながらも星に見とれてしまっているのか。あんなに星を見たというのに、飽きるぐらい見たというのに。

 星というのは何回でも見たいと思うものなのか、飽きてしまうことはないのか。普段全く星を見ない人にとっては珍しいものだとは思う。

 綺麗だなと呟いて、少年は体を動かして背を付けていた冷蔵庫へと向き合う。冷蔵庫は真っ白で汚れ一つない。

 冷蔵の場所、冷凍の場所、野菜室、色んな場所があるけれどどれを開けるのか。少年は冷蔵の場所を開けて、冷蔵庫の中にあるものを確認する。

 そこには金色の砂が落ちている砂時計、甘い砂糖がいっぱい入った紅茶、賞味期限が一ヶ月も過ぎたヨーグルト、わざわざ冷蔵庫に入れなくてもいいような気がする素麺の束、自分が生まれた年のワイン、種を飲んだらお腹の中に芽が出てくると思っていたスイカ、とても苦くて気合いを入れないと飲めない緑茶、外国のお土産を貰ったけど食べたことがないからどんな味なのかわからないスティック状のお菓子、冷凍庫と間違って冷蔵庫に入れてしまっているカップアイス、もう少しで飲みきりそうなスポーツ飲料水が入った二リットルのペットボトルがあった。

 少年はその中から、甘い砂糖がいっぱい入った紅茶を手に取った。

 ペットボトルのキャップを回して取って、コップか何かに紅茶を入れるなんてことはなくそのまま口を付けて飲み始めた。ゴクゴクという音が聞こえる、そんなに喉が渇いていたのか。

 紅茶は五百ミリリットルのペットボトルに入っている。少年はその半分ぐらいまで飲んだところで飲むのをやめた。

「まだユミちゃんとシュウ君は星を見ているかな」

 少年は紅茶を冷蔵庫に直して部屋を出た。

 螺旋階段から下を伺うとそこに二人の姿はなかった。ということはまだ二人は星を見ているということなのかな。動物たちに囲まれて、レジャーシートに寝そべりながら星空を楽しんでいる。

 二人はいないが別の二人は白いソファーに座っていた。一人はおばばで、もう一人は梓さんだ。二人とも何かお話をしていて、時折外を気にしているようだ。

 少年はさっさと下りていかなくて手すりにもたれた。別に外にいかなくても少年がいる場所からでも星は見れる。天井まで伸びる大きなガラスから見れる。

 だからもういいや。いちいち下りるの面倒臭いし星は見飽きたし、楽しみたい人だけ楽しめばいいよ。と思っているのかな。

「なんだい帰っていたのか。ただいまの一言ぐらいちゃんと言いな」

 しかしおばばがそんなことさせなかった。いやそう少年が思っていたのかはわからないけど。

「ただいま」

「おかえりなさい。お団子食べる? ほらこれ」

 梓さんがお皿に乗ったお団子を少年に見せた。

 団子粉で作った丸い形のもので、団子をピラミッド状に重ねたものだ。これが今回のご褒美ってことなのかな、少年は悪い夢から帰ってきたらおばばからご褒美がもらえる。

 そうか、今日は十五夜なんだ。少年のその呟きは宙に浮いて消えた。

「うん、食べるよ!」

 ニコッと笑いながら階段を駆け下りる。

 そんなに急がなくても団子は逃げやしないよ、おばばの声が静かな家に響く。

 その声に外にいるユミちゃんとシュウ君が気付いて体を起こして家のほうを見る。螺旋階段から少年が駆け下りて来るのが見えて、お兄ちゃんお帰りなさいとユミちゃんが大声で言った。そのあと小さな声で、ユミちゃんとの二人の時間は終わりかとシュウ君が言った。

 レジャーシートを囲んでいる動物たちも家のほうを見て、少年におかえりなさいと声をかける。静かな夜がとても騒がしくなる。近くに家があったら苦情がきそうだ。

 階段から下りてきた少年は、白いソファーに腰をおろして月見団子を一つ取って食べた。

「お茶も飲んでね。冷たくて美味しい緑茶だよ」

 梓さんが少年の前にそっとグラスに入った緑茶を置いた。

 ありがとう、そう言って緑茶をいただく。少年の表情が優しくなって幸せそうだ。やっと落ち着けたのだろう。

 グラスをテーブルに置いて、空を見上げる。そこにはキラキラと光輝く星があちこにに散らばっている。

 そしてもう一つ、星に負けないぐらい光輝いている真ん丸のお月様。お月様もおかえりなさいと言って、少年の帰りを労う。

 静かな時間が流れる。とても心地よい時間だ、とても幸せな時間だ。ゆっくりと時が流れているような気がする。

 急かすことも慌てることもなくて、ただ月見団子を食べて冷たくて美味しい緑茶を飲んで、そして真ん丸のお月様を見上げる。それで良い、それだけで最高だ。

 少年は外に向けて手を振った。ユミちゃんが両手を左右に振っているからだろう。因みにシュウ君は手を振っていなくて、寝そべって星を見ている。

 少年が団子に手を伸ばしてそれを口に運んで、ゆっくりと味わいながらお月様を見上げた。おばばも団子に手を伸ばす、梓さんも団子に手を伸ばす。

「そういえばさ」

「なんだい?」

「なになにー」

「……いや、何でもない」

 少年は何かに気付いて何かを言おうとしたけどやめた。

「なんだそれ、何かあるなら遠慮はいらないよ。このおばばに何でも聞きな」

「そうよ、何かあるなら大人を頼ってね。君がここにいる間ぐらいしか私達は協力できないから」

「んーでもなー」

「坊やは言いたいことが言えない日本人なのかい? わたしゃそんな軟弱に育てた覚えはないよ」

「いやいや、おばばは育ててないでしょ。言いたくなかったら別に無理しなくてもいいからね」

「じゃあ言おうかな」

「それでこそ男ってもんだよ。坊やは良い男になるよ、あと何年待つといいだろうねえ」

「あっ言うんだね」

 おばばと梓さんは少年が何を言うのか注目している。だから団子を食べている場合ではない。

 何を言うんだい坊やは、何かなお姉さんに早く教えなさい、きっと大人二人はそんなことを思っている。

「この団子美味しいね」

 少年はニコッと笑った。

「なんだいそんなことかい、勿体ぶるからもっと深刻なことだと思っていたよ」

「ほらほらもっと食べなさーい! これ全部なくなるまでここから逃げられないからね」

「えー」

 少年は苦笑いをしている。でも楽しそうだ。

 湖の向こうから花火があがり空を彩る。レジャーシートで星を見ていたユミちゃんとシュウ君はその音に気付いて、星から花火へと興味を移した。花火だー綺麗とはしゃいでいる。

 目を閉じながら口へと月見団子を運ぶ少年は、ゆっくりとこの時間を楽しんでいる。

 きっと花火の音も聞こえているだろう。空を彩るその様子を、心の中で思い描いてるのかもしれない。











 ☆星夜に走る夜汽車 おわり☆

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