平穏の羨望
1日空いてしまいましたね…。
ま、不定期と宣言していたのでご了承ください。
今回も少なめの文字数です。
道路に響き渡る金属が擦れる音。通行人の悲鳴や被害者の呻き声。そして走り去るバイク。
その現場にいた者は目の前で起こった出来事に狼狽し、声をかける事はおろか、通報すらできなかったのである。
人気の少ない交差点で起こった事故は、加害者が消えた事で轢き逃げ事件へと発展。警察が動き出すこととなってしまったのだ。
政府と組織の議論が始まる1週間前、城崎大介は平穏な生活を送っていた。
自分から進んで物事を決めるタイプではなく、どちらかといえば優柔不断な方である。
大介は誰よりも日常を好む変わり者で、行事があるたび周りの人間に振り回されてきた。
そんな大介にも一つぐらい趣味はある。
それは、高校1年の夏に取得した免許でバイクを走らせることであった。
風を切る時は、何もかも嫌なことから解放されている気分になる。
その爽快感が病みつきになり、街中でも我を忘れて疾走することが多々あった。
そして高校2年に上がると、途端に「変わり者」というだけでいじめられるようになった。
こちらは平穏無事な日常を望んでいるのに、それが出来ない。
精神を安定させることだけでいっぱいいっぱいなのである。
別にいじめている人たちを恨んだりはしていないつもりだ。
だが、見えない心の部分には大分と不可がかかっていたのだろうか。
気が付くとバイクに跨り、街中を疾走していた。
住宅街となれば曲がり角は当然のように増えてくる。
その曲がり角を如何にスピードを落とさずに曲がれるか、という非常識な行動に出た。
最初は調子よく曲がっていたのだが、次々と曲がり角が来ると頭が混乱していまい、一方通行の道に侵入。
すると曲がり切ったその刹那、自転車に乗った女性を発見し、慌ててブレーキをかけるも間に合わず。
お互いの乗り物が生々しい音をあげて転倒。
大介はヘルメットを着用していたので無事だったが、自転車に乗っていた女性は頭から血を流して呻いていた。
「うぅっ…痛…い…」
その悲痛な呻き声に大介は一瞬、思考停止状態に陥った。
その場にいた通行人にも、大介に似た状態になっているようであった。
普通なら、事故を起こした加害者は被害者の様子を見届けなければならないが、
この時の大介は動揺し、恐怖に突き動かされるようにその場を立ち去ったのだ。
大介が立ち去った後、その場にいた通行人がようやく事の重大さを理解し、警察と救急に連絡。
警察が現場に到着した頃には、風は止み、救急車のサイレンだけが寂しく響き渡っていた。
大介はそのままバイクを走らせ続け、街外れの公園に来たところでガソリンがつきてしまった。
己の犯した罪を自覚した時は、あまりに遅すぎたのだ。
事故を起こした場所に留まり、被害者の行く末を見守っていたなら、いくらか軽い罪で済んだだろう。
だが、沸き上がってくる恐怖に大介は耐えきれなかった。いや、従ったというべきか。
どちらにしろ、起こってしまったことは取り返しが効くものではない。
残るのは後悔と罪悪感だけ。
「オレ…これから、どうやって生きていけばいいんだよ…」
この放った言葉さえも虚空に儚く吸収されていった。大介は自分の未来を嘆くと共に、今の自分の状況を必死に理解しようとしていた。
が、そこへ白衣を着た人たちが大介を取り囲み、話し掛けてきた。
「城崎大介さんですね?業務上過失傷害罪の容疑で連行させていただきます」
警察でもないのに、そんな権限あるのかよ…。
と、言い返してやりたかったが、自分は今容疑者。身の程をわきまえないほど、大介は馬鹿ではない。
素直に車に乗り込み、30分ほどすると無機質な白い壁が見えてきた。
何かの研究所だろうか、という疑問と自分の身の危険を感じたが、声を発することができなかった。
そして、車は入り口に止められ、大介は手錠をハメられてその中に姿を消した。
(…オレの平穏は取り戻せるのだろうか…)
さて、今回も動きがたくさんありましたね!←
次回も動きのある話にしたいです。
早く書きたいなぁ…