不穏な陰
初めて投稿する連載作品です。
文章力がないほうなので、温かい目で見てやってください。
政府第3会議室。
重い沈黙と湿気が入り混じったこの部屋で今、重要な議論がなされている。
それは、「ある装置を稼働させるか」という議案である。
ある者は痛烈に批判し、又ある者は過度に擁護する。
この膠着状態が7時間も続いていると思うと嫌気がさしてくる。
この議案さえ否決されれば私は満足なのだ。
しかし、そう思惑通りに事が進むかと言えばそうでもない。
この議論には政府以外の組織が絡んでいるからだ。
彼らとは何度も話し合いの場を設けたが、交渉はうまくいかず破談。
今回も激しい論議となってきている。
批判を越えた暴言、つばぜり合い、水掛け論・・・・。
このまま議論は平行線で終わるのかと思われたが、私に名案が浮かんだ。
【多数決】である。
奴らの人数は多く見積もっても4割・・・・。
この国は民主主義であるがゆえに、過半数を取れなければ必然的に過半数以上の意見に従うしかないのだ。
(一手勝った!奴らとの議論ではこちらが不利だが、人数ではこちらが有利だ。)
いい事を思いつけば善は急げ。
勝利を確信して発言したのである。
「皆様、議論ではなく多数決をとりませんか?」
この意見を聞いた者は皆、感嘆の声を漏らした。
議論ばかりで疲れているのだろうか。口にする言葉は全て「是」であった。
ただ、組織側の人々はこの時を待っていたかのように不敵な笑みをこぼしていたのである。
この時、私に慢心があったのかもしれない。
政府側の人間が絶対に裏切らないと・・・。
私の名案に隙などないと・・・。
早速投票がなされ、開票作業に入った。
私は安堵の息を漏らしながら、その作業を見守っていた。
一方組織側の人々も、「これは勝ち戦だ」と言わんばかりの自信を溢れさせながら見ている。
(残念だが、この議案は成立しないのだよ。
確かに議論ではこちらが不利であったが、人数でとなれば話は別だ。
少人数であるがゆえの弱点。君たちの敗因はそこにある。
恨むのなら、その人数で行かせたトップの人間を恨むのだな。)
しかし、この見くびりは後に身をもって改められる事となる。
「えー、では開票作業の結果をお知らせします。
賛成118票 反対82票よって、この議案は成立いたしました!」
組織側の人々が歓喜の言葉を発しながらお互いを讃えあっている。
一方、嘆き、悲しみ、驚愕するは政府の人間である。
きっちり多めに人数を見積もって臨んだ多数決。保険はかけられ、万全の体制で発言したはずだったのだ。しかし、現実はそう甘くはなかったのである。
もし、このまま議論を続けていれば組織側に勝てたのだろうか。いや、勝てなかっただろう。
それは、彼らがこの国の問題を解決する唯一の手段を所持しているからだ。
どちらにしろ、政府は組織の言いなりになるしか道はなかったのだ。
喧騒が止まない会議室の中で、私は頭の整理が追い付かず、ただただ絶望に打ち拉がれていた。
いや、この議案が可決された現実というものを受け入れたくないのだろう。
ようやく頭が冴えてやるべき事を考え始めた時には、喧騒は止み、静寂の会議室に私一人が取り残されていた。
あの時に気付くべきだったのかもしれない。
会議が始まる前、組織側の人間が含み笑いをしていることに。
その人たちの口が微かに動いていた事に。
あれは何と言っていたのだろうか。
今となっては確かめようがない。
最悪の事態が起こった今、最善の策をうつ他に手立てはない。
そう、政府の名誉挽回の為に。
No1は動き出す。
不穏な笑みを浮かべながら・・・・。
まずは、この場を借りてお礼をば。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!
不定期更新になるかと思いますが、気に入ってくだされば幸いです。
今回はあまり動きがない話でしたが、次回から動き出す予定です・・・・←