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三題噺もどき5

卒業式

作者: 狐彪
掲載日:2026/03/02

三題噺もどき―はっぴゃくさんじゅうよん。

 




 冷たいような、ぬるいような。

 何とも言えない微妙な空気の中。

 時折、鼻をすする音が聞こえてくる。

「……」

 どこの学校の体育館にもあるような、大きな時計が静かに時間を進めている。

 マイク越しに聞こえる、教師の声に少しの涙が混じっている。

 応える生徒の声は、しんとした体育館に大きく響く。

「……」

 いやまぁ、正確には吹奏楽部が授賞式に定番の曲を演奏しているのだけど、小さく静かにしているから、返事がよく響くのだ。

 なんという曲だったけ……運命?違うな、運命はもっと悲惨な曲だよな。カノン?威風堂々は入場の時のやつだったはずだし。なんだ……。でもこの曲聞いていると、アニメを思い出すんだよな。ウサギが出てくる。

「……」

 壇上へと続く、短い階段をのぼり、中心に経つ校長の元へと向かう。

 静々と、賞状を受け取り、頭を下げる。

 ……正直、好調との関わりなんて何もないのに、こういう時ばかり頭を下げるのは何なのだろうと思う。毎回毎回、誰も望んでいないのに長々と話をするだけの人だろう。

「……、」

 漏れそうになるあくびを、なんとか噛み殺す。

 一応、両サイドには教師陣と、来賓が座っている。

 別に私は関係ないから、あくびくらい許されると思っているけれど、まぁ、一応。

 マスクをしていてもあくびをしたことは分かるから。

「……」

 淡々と、先輩方の卒業式が目の前で進んでいる。

 なぜ、これに2年生が参加しないといけないのか全く意味が分からないが。

 そういうモノだと認識しておこう。中学の頃もそういうモノだったから。

「……」

 2年生の出番もないわけではないのだ。

 今のご時世やっている所があるか分からないが、送辞とかいう……いらないだろこの時間というタイミングがあるので。でもまぁ言う人は決まっているし、ならその人らだけで良いのではと思うのだけど。手紙を読むのはちなみに、生徒会長だ。なら、せいぜい生徒会員だけでよくないか。

「……」

 眠い。

 ほんとに、眠い。

 関係がないからものすごく眠い。

 たとえ当事者であっても、卒業式というのはものすごく眠くなるのに。

 関係ないとさらに眠くて仕方がなくなる。

「……」

 眠気覚ましに、ガムとかコーヒーとかくれるならまだしも。

 何もないままで、ただ座るだけの時間が長いのに……その上、最近は温かくなっているせいでこの微妙な空気もよくない。

 今日は生憎の雨ではあるから、多少ひえてはいるのだけど、それでも体育間の中はぬるくて仕方ない。

「……」

 隣に座るクラスメイトは、限界を迎えたのか船をこぎ出した。

 ちら―と、横を見ると、他のクラスも並んで座っているのだけど。

 同じ横列に、あの子がいる。

 基本的に、私もあの子も出席番号は後ろの方なので大抵並ぶのだ。

「……、」

 思わず笑いそうになる。

 あの子もあの子で、船を漕いでいた。

 長い髪をゆらゆらとしながら、重たい頭を何度も起こして。

 それでもまぁ前を見ようと言う意思はあるのだから、それだけでいいというモノだろう。

 私はもう、興味もないから見る気も失せた。眠そうなあの子を見ている方が有意義な気がしてきた。

「……」

 まぁ、でも、もう最後のクラスだし。

 聞いている感じ、残り数人という所だろう。

 しかしこの後が長いんだよなぁ……一時期コロナの影響で短縮されていたのだけど。

 もう去年あたりから通常通りに戻されているので。

「……」

 校長と来賓からの挨拶。

 送辞と答辞。

 何かしらの歌を歌って。

 やっと、退場だろう。

「……」

 その後片づけがあるけど。

 なんか、甘いものが飲みたくなってきたなぁ。

 ココアとか飲んでから片付けに参加したい。というかもう帰りたい。

「……」

 ねむ。












 お題:運命・ココア・コーヒー

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