卒業式
三題噺もどき―はっぴゃくさんじゅうよん。
冷たいような、ぬるいような。
何とも言えない微妙な空気の中。
時折、鼻をすする音が聞こえてくる。
「……」
どこの学校の体育館にもあるような、大きな時計が静かに時間を進めている。
マイク越しに聞こえる、教師の声に少しの涙が混じっている。
応える生徒の声は、しんとした体育館に大きく響く。
「……」
いやまぁ、正確には吹奏楽部が授賞式に定番の曲を演奏しているのだけど、小さく静かにしているから、返事がよく響くのだ。
なんという曲だったけ……運命?違うな、運命はもっと悲惨な曲だよな。カノン?威風堂々は入場の時のやつだったはずだし。なんだ……。でもこの曲聞いていると、アニメを思い出すんだよな。ウサギが出てくる。
「……」
壇上へと続く、短い階段をのぼり、中心に経つ校長の元へと向かう。
静々と、賞状を受け取り、頭を下げる。
……正直、好調との関わりなんて何もないのに、こういう時ばかり頭を下げるのは何なのだろうと思う。毎回毎回、誰も望んでいないのに長々と話をするだけの人だろう。
「……、」
漏れそうになるあくびを、なんとか噛み殺す。
一応、両サイドには教師陣と、来賓が座っている。
別に私は関係ないから、あくびくらい許されると思っているけれど、まぁ、一応。
マスクをしていてもあくびをしたことは分かるから。
「……」
淡々と、先輩方の卒業式が目の前で進んでいる。
なぜ、これに2年生が参加しないといけないのか全く意味が分からないが。
そういうモノだと認識しておこう。中学の頃もそういうモノだったから。
「……」
2年生の出番もないわけではないのだ。
今のご時世やっている所があるか分からないが、送辞とかいう……いらないだろこの時間というタイミングがあるので。でもまぁ言う人は決まっているし、ならその人らだけで良いのではと思うのだけど。手紙を読むのはちなみに、生徒会長だ。なら、せいぜい生徒会員だけでよくないか。
「……」
眠い。
ほんとに、眠い。
関係がないからものすごく眠い。
たとえ当事者であっても、卒業式というのはものすごく眠くなるのに。
関係ないとさらに眠くて仕方がなくなる。
「……」
眠気覚ましに、ガムとかコーヒーとかくれるならまだしも。
何もないままで、ただ座るだけの時間が長いのに……その上、最近は温かくなっているせいでこの微妙な空気もよくない。
今日は生憎の雨ではあるから、多少ひえてはいるのだけど、それでも体育間の中はぬるくて仕方ない。
「……」
隣に座るクラスメイトは、限界を迎えたのか船をこぎ出した。
ちら―と、横を見ると、他のクラスも並んで座っているのだけど。
同じ横列に、あの子がいる。
基本的に、私もあの子も出席番号は後ろの方なので大抵並ぶのだ。
「……、」
思わず笑いそうになる。
あの子もあの子で、船を漕いでいた。
長い髪をゆらゆらとしながら、重たい頭を何度も起こして。
それでもまぁ前を見ようと言う意思はあるのだから、それだけでいいというモノだろう。
私はもう、興味もないから見る気も失せた。眠そうなあの子を見ている方が有意義な気がしてきた。
「……」
まぁ、でも、もう最後のクラスだし。
聞いている感じ、残り数人という所だろう。
しかしこの後が長いんだよなぁ……一時期コロナの影響で短縮されていたのだけど。
もう去年あたりから通常通りに戻されているので。
「……」
校長と来賓からの挨拶。
送辞と答辞。
何かしらの歌を歌って。
やっと、退場だろう。
「……」
その後片づけがあるけど。
なんか、甘いものが飲みたくなってきたなぁ。
ココアとか飲んでから片付けに参加したい。というかもう帰りたい。
「……」
ねむ。
お題:運命・ココア・コーヒー




