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キラキラ町のミラ

作者: S珍蔵
掲載日:2026/02/06


 むかしむかし、山と川に囲まれた小さな町がありました。

その町には、不思議な言い伝えがありました。


「キラキラしたものを持ちすぎると、呪われる」


町の人たちは、最初それを笑い話だと思っていました。

ところがある日、広場に住む宝石商の家が、朝になると空っぽになっていたのです。

宝石も、金貨も、鏡のように輝く食器も――すべて消えていました。


残っていたのは、灰色になった宝石商の目だけでした。その目は、なぜか、町の広場の掲示板の上に嵌め込まれました。そして、人がその目をみると、なんだか、無性にキラキラしたものを集めたくなりました。


町の人たちは、競うようにキラキラを集め始めました。

きれいな服、光る靴、眩しい指輪。

持っていないと、遅れている気がしたのです。


でも、キラキラが増えるほど、町の色は失われていきました。

空はくすみ、川は濁り、人の声は小さくなりました。

笑顔だけが、どこかガラス細工のようでした。


町の外れに、ミラという少女がいました。

ミラはキラキラしたものを一つも持っていませんでした。

代わりに、古い木のボタンと、母の歌声を大事にしていました。


ある夜、ミラの夢の中で、キラキラの呪いの正体が現れました。

それは怪物ではなく、光そのものでした。


「もっと欲しいだろう?」

光は甘くささやきます。


ミラは首を振りました。

「もう十分。だって、私の心は光ってる」


すると光は、攻め手を変えました。


「なら、あなたを透明感溢れる美少女にしてあげるっ!」

「うっ。美少女……なりたい」

「でしょ。キラキラ!キラキラ!」


翌日から、彼女は透明感溢れる美少女になるのだった。彼女自身がキラキラしていて、透き通るクリスタルのように光っているのであった。


 町の人々は、彼女を見ていたら、自分の持っているキラキラしたものが、不釣り合いに見えてきました。彼女への人気が高まると、町の人たちはキラキラしたものを追わなくなったのです。町の人たちは、キラキラよりも、美少女ミラを追いかけるようになりました。


 彼女は、いろんなところでコンサートをやり、握手会をやり、対談をして、本も出しました。彼女の特徴は、透明感です。本当に、どこに行っても彼女は、ガラス張りのように透明でした。その透明度がみなの心をうっとりさせるのです。


 ある日、彼女が鏡で自分を見ると、自分が薄まっていることに気付きます。余りにも周りから透明であることを期待されすぎて、自分が本当に透き通ってきたのでした。マネージャーに声をかけると、マネージャーは大喜びです。


 コンサートの興行主も、司会者も、ファンたちも彼女がどんどん透明になるほどに、大歓声で大喜びしました。ミラは、初めはちょっと怖かったのですが、皆が喜んでくれるのならそれで良いと思いました。


 ある日、起きてみたら、ミラは自分が完全に透明になってしまったことを知りました。鏡にも映らなくなり、マネージャーもミラがどこにいるのかわからなくなりましたが、声を聞いて、わかるようになりました。


「これ、会場のみんな喜ぶかな」

「わ、わかりません。でも、皆んなが望んでいたことなんでしょう?どうですか?一回挑戦してみませんか」

「うん」


 しかし、その日、コンサートを開きましたが、ミラの姿がないので、お客たちは怒りました。薄くなって少し見えているくらいなら、透明感として褒められるのですが、完全に見えないと、そこにいないんじゃないかとどうしても思ってしまうのです。そして、何より空っぽのステージを見て、歓声をあげるほど、観客たちも馬鹿ではありませんでした。


 ミラは、泣きながら、ステージを去ります。そして、途方にくれて道を歩いていたら、後ろからやってきた車に轢かれて死んでしまいました。しかし、誰もミラの死体には気付きませんでした。

 

 それから、町の人々は、どうなったかというと、今でも何かに熱中していましたが、それはどこの町でもそういうものです。気がついたら、掲示板の商人の目も消えておりました。

 

 町の外れに、ミラのことを心から慕っていた少女がいました。彼女は、いつかミラのようなアイドルになりたいと思っていたのです。周りにもそのことを話しており、二代目ミラと名乗ったりして、コンサートも開きました。ある日、夢の中で、また例の光の怪物がやってきます。


「お前は町で一番のアイドルになりたいか」

「なりたいです」

「ならば、透明感溢れる美少女にしてやろう」

「いや。それは、ミラさんが透明感溢れ過ぎて消えちゃったんで、いいです」

「では、どうやって有名になるんだ」

「お前を成敗して、退魔師として有名になってやるっ!」


というと、例の商人の目を出しました。彼女はネックレスにして、肌身離さず持っていたのです。


「そ、それは。私の魔力にガンとして影響を受けなかった商人の目だな!」

「ふふふ。見つけたぞ!悪霊め!あたしは、あんたが闇に葬った商人の娘よ!」

「な、なんだって」

「さあ。教えてもらおうか。あんたは、何者だ。どうして、この町に悪さをするんだ」

「ふっ。ならば、教えてやろう。俺は、この町の公園の掃除夫だった。三十年、ずっとこの町の公園を掃除していた。だが、ある日、あんたの父親の馬車が、俺を轢いてしまったのだ。我はその恨みの念だ」

「あんたにもそんな悲しい過去があったのね」

「ああそうだ」



 すると、向こうから歩いてくる者がいる。それは、キラキラ町のミラでした。


「お前は」

「ミラさん!」


ミラは、悪霊の肩を叩く。


「あんたも年貢の納め時ね。私は今、天国で歌ってます。さあ。あんたも一緒に天国にゆきましょう」

「え?俺は人を不幸にしたんだぞ。天国に行けるのか」

「行けないわ。あんたは、血の池地獄で数百年、苦しまないといけない」

.「それが嫌だから、成仏しないんだよ!」

「でも、大丈夫。あんたのために特製の浮き輪を作っておいたから。溺れることはないから」

「そうなの。じゃ、じゃあ。地獄に行こっかな」

「その言葉、いただきました」


 というと、ショボーンとしている悪霊の首根っこを捕まえて、ミラは笑顔を見せるのでした。


「二代目ミラちゃん。その商人の目は、特級呪具になっているから、お祓いした方がいいかも」

「わかりました。先輩」

「あと、これからも、コンサート続けてね」

「はい。チャリティーコンサートの本数も徐々に増やしてゆきますので」

「わかった。あんた、優秀よ。天国で噂になっているからね。それじゃ頑張ってね。バイバイ」

「そちらも天国で頑張ってください」

「はーい」


 彼女と悪霊は光の中に消えていったのでした。二代目ミラは、それから、暫くアイドルとして活躍して、年老いたら、尼僧になって、青空教室を開いて、多くの人たちに人生講話をきかせるのでした。そんな彼女を天国から、ミラと商人が見守っておりました。


   完


 






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