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第二章 39:それぞれの役目

 交流戦の後、エイシャに呼び出されて連れて来られた教会。

 そこで魔物と化して襲ってきた、クラリッサ。

 そこまで話し終えたルナが、忌々しそうにウィルを睨む。

「邪魔さえ入んなかったら、とっくに仕留めていたはずなのに。誰かのせいで、あと一歩ってところで逃げられちゃったってわけよ」

「…いや、その、…本当にごめん」

 申し訳なさそうに謝るウィルの肩を、シュタインがぽんと叩いた。

「確かなことは言えないさ。何か奥の手を、隠し持っていたかも知れない。逃げたのも、俺たちが来たからとも考えられる」

 ルナの話の途中から、パティアがずっと何かを考え込んでいる。

「ん? 姫様、どうかしたか?」

 気付いたシュタインが聞くが、パティアは煮え切らない様子で首を横に振った。

「なんでもない。多分、気のせいだから」

 ルナの話に出てきた、とある名前に引っ掛かった。

 しかし、彼女がそんなところにいるわけがない。それに、自分が知っている彼女の印象と、ルナの話に出てくる彼女とでは、まったく人物像が食い違う。

 ウィルが見たという銀色の髪の黒幕と思しき女性と、その彼女に容貌がそっくりな、目の前にいるルナという銀色の髪の女性。

 この一連の事件、なにかが妙だ。パティアの直感がそう告げる。

「ルナはどうする?」

 シュタインが相棒に問う。

 ルナは顎に手を当てて、目線を落とした。

「そうね、クラリッサの行方のこともあるし、学院に戻るわ。他に、どれだけクラリッサの手の内の者がいるか分からないし。もしかすると、――教師全員ということも」

「そうだな」と、シュタインが優し気に笑う。

「生徒たちを守らないといけないしな」

 ルナの顔が赤くなる。

「そ、そんなんじゃないわ。あくまでも事件の解決のためよ」

 慌てて言い訳するルナを見て、ウィルは確信する。シュタインが言った通り、やはり王都の地下墳墓で見たあの銀髪の女性と、彼女とは別人だ。

 シュタインが、パティアの方を振り向く。

「教会の方の後始末は、…申し訳ないが、姫様にお願いしたい」

「分かっています」

 パティアは冷静に頷いた。

「面倒なことを頼んで、済まんな」と、小さく片手を自身の顔の前に掲げるシュタインに、パティアは微笑んで応じた。

「いえ、そのために来たのですから」

 それを聞いて笑みを浮かべながら、シュタインはトンッとウィルの背中を叩いた。

「俺とウィルは、姫様の護衛だな」

「シュタ」と、ルナは相棒の名前を呼んだ。

「テオドラ・ブロムのことも調べてちょうだい。彼女は学院じゃなくて、教会にいるらしいのよ」

「そうか、分かった」と、シュタインが頷く。

 教会も学院も、シスター・マルセラの事件の延長線上にあるということが分かった以上、あえてこそこそ動く必要もなくなった。少々は強引な手法に出てもいいだろう。

「気を付けろよ」

 声を掛けるシュタインに、ルナは不敵な笑みで返した。

「誰だと思ってるのよ」

 そして、こぶしでシュタインの胸を叩く。

「そっちも気を付けなさいよ」

「ああ。おまえこそ、俺を誰だと思ってるんだ」

 シュタインも笑顔で答えた。

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