第二章 16:閑話、兄からの手紙
本日の授業を終えて、ルナはルームメイトとともに自室に戻った。
そこで自分宛ての荷物が届いているのを確認して、彼女はパートナーに対する溜飲を少しだけ下げた。
置いてあった布の袋を開けると、何日か分の着替えと日用品が詰められていた。
それと、一通の手紙。
「お兄さんから?」
手紙を開いたルナの後ろから、グレタが覗き込む。
エリーへ。
新規の顧客から取引の依頼あり。しばらく街から離れる。
頼まれていた失せ物は見つからない。そちらで工面を頼む。
カイルより。
手紙を読み終えたルナが、いつもの癖でくしゃっと握り潰した。
燃やそうとして、気付いてやめる。
「随分とそっけない手紙ね」
すぐに興味を失ったグレタが、二段ベッドの下段に腰かけた。
「…仕事が忙しいのよ。きっと」
日用品を整理しながら、ルナが答える。
手紙の内容を意訳すると、こうだ。
――情報筋から新しい情報が入ったから、しばらくそちらを調べることにする。ヴァルターの娘、テオドラ・ブロムの手掛かりはまだ掴めない。ルナの方でも引き続き、調査を進めてくれ。
テオドラはこのアウレリア学院の生徒だった。そしてある時期から、連絡が取れなくなった。
生存しているのかどうかすら不明だ。
ルナと同様に、この寄宿学校に入学したばかりのグレタに聞いても、なんの情報も得られないだろう。聞くとしても、ほかの生徒か、教師か。
「そろそろ夕食ね。食堂に行きましょう」
ベッドの下段で足をぶらぶらと揺らしていたグレタが、ひょいと跳ねるように立ち上がった。
頷いて、ルナも立ち上がった。
袋の底にあった小さな額縁を取り出して、机の上にそっと置く。
額縁の中では、金色の髪の、肖像の少女が屈託なく優しげに微笑んでいた。




