第二章 13:港湾都市で待っていた者
日が傾きかけた頃、ウィルとパティアの二人は港湾都市ペルセイドに着いた。
そろそろ帰宅の途につく時間帯ではあったが、まだ人々の往来は多い。さすがは王都の衛星都市といったところか。
行き交う町民や、旅人たちに交じって、やたらとガタイの良い男たちの姿も見える。浅黒く日焼けした太い腕を、これ見よがしに見せつけていた。
門を通り抜けて、二人は街の大通りを進む。
漂う潮風の匂いが強くなる。あらためてここが港町であることを思い出させた。
乗合馬車の停留所はすぐに見つかった。
ウィルがそちらに向かおうとしたが、それに構わず、パティアは大通りをどんどんと進んで行く。
「お、おいっ。停留所は――」言いかけたウィルを、彼女は無視する。
慌てて、ウィルはパティアを追いかけた。
「どこに行くんだよ」
非難するように言う彼に、パティアは軽く振り返る。
「こっちよ」と、意地悪そうな笑みを浮かべた。
二人は、そのまま大通りを抜ける。視界の向こう側に、港が見えてきた。
海に突き出した埠頭に、何艘もの船が並んでいる。漁船のような小型船から、数十人が乗れる旅客船まで様々だ。
日が暮れようとしている。辺りがだんだんと暗くなってきた。
まだ作業中の船員たちを横目に、パティアがどんどんと埠頭の先へと向かう。
ひと際、大きな船がそこにあった。
濃紺の船体の帆船だ。船首の金色の縁取りが、この船がただの旅客船でないことを示している。
タラップの前の木箱に、大柄な男が座っていた。ここまでにすれ違った船員とは違い、軽装ながら兵士の格好をしている。
パティアは真っすぐに、その男の元へと向かった。
彼女の存在に気付いたらしく、ゆっくりと男が立ち上がった。
男の日に焼けた顔の左頬には、深い傷跡が走っていた。古傷のようだ。
歯を見せて笑いながら、男が手を上げた。
「姫様、待ちくたびれましたぜ」
「フィーノ」と、パティアが彼の名前を呼ぶ。
「出発の準備は?」
「いつでも発てます。残りの荷物は、姫様と、――そっちの坊主だけです」
フィーノが意味ありげににやけた。
「そう」と、パティアが微笑む。
そして、ウィルの方を振り返った。
「追っ手が来るまで、のんびりとしてるわけにはいかないじゃない」
呆気にとられていたウィルに、パティアが片目を瞑ってみせる。
「海路で、直行よ」




