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BLOOD STORY  作者: 初、
24/48

第二章 10:赤い髪のルームメイト

 アウレリア学院は四つの寮を有する、全寮制のボーディングスクールだ。

 慈しみの心を育てる、カリタス寮。

 武芸や積極性を学ぶ、フォルティトゥド寮。

 学術や研究を主な活動とする、プルーデンティア寮。

 そして、規律や規範を糧として、克己心を掲げるテンペランティア寮。

 ルナが入寮するフォルティトゥド寮は、校舎を中心として、南東に位置する。

 エイシャに連れられて通された部屋には、先住者がいた。

 赤い髪の少女が、目をぱちくりとさせる。荷解きの最中らしく、腰を屈めて木箱に顔を突っ込んでいる。

「グレタ、同居人ですよ」

 エイシャが、赤い髪の少女に声をかけた。

「は、はいっ」と、グレタは立ち上がって背筋を伸ばした。

 部屋の端には木製の二段ベッドが置かれ、窓からは午後の日差しが入り込む。窓の両側に、ふたつの小さな机が置かれてあり、片方の机の上には、すでにいくつかの本が積まれている。

 入口の側に突っ立ったままのルナの背中を、エイシャがそっと押す。

「エリー、自己紹介なさい」

 ルナが一歩、前に出る。

「…えと、エリー・カーミラです。…よろしくお願いします」

 黒いフードで顔を隠しながら名乗るルナに、グレタは屈託なく歯を見せて笑顔を向けた。

「グレタ・レヴェナです。よろしくね」

 その元気な笑顔に、ルナは圧倒されそうになる。

「後のことは、――グレタ、頼みますね」

 告げて、エイシャが退室する。

「はいっ」と返事して、グレタは再び荷解きに戻る。

「私も、先週に入ったばかりなんだ」

 グレタがごそごそと木箱を漁っている。

「なかなか荷物整理が終わらなくて。エリーさんの荷物は後から届くの?」

 言われて、ルナはあらためて自身の身の回りを見る。何も持っていない。着替えすらない。

 そもそも寄宿学校に潜入するなんてこと自体が、成り行きだ。ルナには、ただただシュタインの思い付きだとしか思えない。

「後で、兄が届けてくれると、…思います」

 ――届けなかったら、ただじゃおかない。

 込み上げてくる苛立ちを、今は必死で押し隠す。

「へー、お兄さんがいるんだ」

 グレタが興味深げに、顔を上げた。

「私、一人っ子だから。兄弟なんて羨ましいなあ。ねえ、――」

 目をきらきらと輝かせながら、グレタがルナに詰め寄る。

「お兄さんって、どんな人? かっこいい?」

 ルナの手を握って、グレタが顔を覗き込んできた。

 思わず気圧されつつも、左斜め上に視線を流しながら、ルナはパートナーの顔を思い浮かべる。

 少しの間。ルナはゆっくりと瞬きすると、吐き捨てるように言った。

「いけ好かない奴よ」

 その答えを聞いているのかいないのか、グレタはじっとルナの顔を覗き込んだままだ。

「な、なに…?」

 身を引いて問うルナを、グレタは目を見開いて食い入るように見つめた。

「…すごい綺麗」

 グレタはうっとりと呟く。

「きっとお兄さんも、素敵な人なんでしょうね」

 そして、にこりと笑った。

「ねえ、仲良くしましょ」

 ルナは曖昧に微笑んで、それに返した。

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